研究課題/領域番号 |
19K04719
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
藤森 繁 大同大学, 工学部, 准教授 (60437077)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小径ドリル型削孔試験 / 表層品質 / モルタル / コンクリート / 反発度法 / 機械インピーダンス法 / 引っかき試験 |
研究実績の概要 |
小径ドリル型削孔試験は,微破壊試験法の一つである。これまでに,表層品質と関係の強いブリーディングがドリル削孔速度に及ぼす影響や,さらに,その削孔跡を利用した透気試験方法についても検討してきたが,ドリル削孔で得られる測定値が評価するコンクリート表層部の要素についての知見は十分ではない。 そのため,本年度は,コンクリート表層を対象とした非破壊・微破壊試験法のうち,構造体の圧縮強度推定を目的とした反発度法と機械インピーダンス法,ならびに表層強度推定に用いられる引っかき試験で得られる測定値と,ドリル削孔速度との関係を検討した。また,ウェットスクリーニングしたモルタル試験体の実験結果との比較によって,粗骨材の影響を検証し,併せて,表層部の構成材料において,各試験法が評価している要素についても検討した結果,以下の知見が得られた。 (1)コンクリートを対象とした場合,表層5mmの範囲で算出された削孔速度と,表層の健全性の指標値であるハゼ幅,INDX値との間には相関関係がみられること。(2)コンクリートを対象とした場合,表層5mmの範囲で算出された削孔速度と,構造体強度の指標値であるSTR値,反発度との間には強い相関関係がみられること。(3)当該実験の範囲内ではあるが,小径ドリル型削孔試験による削孔速度を用いて,コンクリート表層の健全性の評価ならびに構造体の圧縮強度を推定できる可能性があること。(4)ウェットスクリーニングを経たモルタルを対象とした場合,各試験法の測定値は,水セメント比を実験要因とした場合には,コンクリートと同様の変化傾向を示すが,一方,単位粗骨材量を実験要因とした場合には,原コンクリートの配合によってモルタルの構成材料の比が変化するため,各試験法の評価要素の差異が,削孔速度と各試験法の測定値との対応関係に影響を及ぼすこと。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗がやや遅れているとした要因は,(1)既存の試験機に用いていた部品の調達が困難になったため,同等性能を有する新しい試験機を別部品を用いて製作した。しかしながら,その性能評価の過程において,既存の試験機では解決済みであった削孔深さの増大にともなう削孔速度が低下する現象が確認されたため,新しい試験機の不具合の解明と修正に時間がかかっており,新しい試験機を使用した実験が困難であること,また,(2)小径ドリル型削孔試験において,削孔速度がコンクリート表層の構成材料や構造のうち何を評価しているのかが十分に明らかになっていないことから,削孔試験機の改良に必要な十分な資料が得られていないこと,の2点である。 (1)については,現在も原因究明のために,機器製作者と検討をつづけている。また,(2)については,各種非破壊・微破壊試験法の測定値との比較によって,小径ドリル型削孔試験で得られる削孔速度がコンクリートの何を評価しているかを検討し,併せて,セメントペーストのみを削孔した場合との比較検討によって,削孔速度の算出方法の改善を試みた。現時点では公表には至っていないものもあるが,削孔試験が評価しているコンクリートの構成要素および削孔速度の算出方法の改善方法についての資料を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施した,ある程度コンクリート表層のうち何を評価しているのかが明らかになっている既存の非破壊,微破壊試験方法の測定値との比較検討によって,小径ドリル型削孔試験機で得られる削孔速度がモルタル,コンクリートの表層を構成する材料,構成のうち何を評価しているかについて,また,削孔速度の算出方法に関する新たな資料を得ることができた。 今後は,削孔速度の評価している材料の構成,構造について定量的に明らかにすることを目的とした検討を,セメントペースト,モルタルおよびコンクリートを対象として進めつつ,併せて,検討中の削孔速度の算出方法の改善・提案を試みる。また,これまでに実施した削孔試験の結果を,新たに改善・提案した削孔速度の算出方法によって得られた削孔速度によって再評価することで,その妥当性について検証しながら,削孔試験機の改良方法についての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに作成した試験機において,既存の試験機では解決していた削孔深さの増大による削孔速度が低下する現象が確認されたため,原因究明と改良が必要になったこと,また,本年度の研究成果によって得られた結果より,削孔速度の算出のための新たなアルゴリズムの検討にともなう,既存の非破壊・微破壊試験機で得られる測定値との比較検討のための実験が必要であることに起因する。 現在,試験機の不具合の改修およびソフトウェア改修のための検討を続けている。未使用の助成金については,主として,(1)新たに製作した試験機の不具合改修のための費用,(2)コンクリートの表層の材料,構成を考慮した新たな削孔速度の算出のためのソフトウェア改修費用,および,(3)新たに改善・提案した手法による検証実験のための試験体製作費用,(4)より精確な表層品質評価のための試験機の改修費用として使用する。また,学会発表にともなう旅費および試験機に関する消耗品費としても使用する予定である。
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