本研究は,小径ドリル型削孔試験を用いて,簡便かつ詳細に,コンクリートの強度と併せて,表層の健全性を評価することを目的とする。鉄筋コンクリート部材の健全性はかぶり厚まで評価できることが望ましいが,現状の小径ドリル型削孔試験の削孔可能深さは10mmであるため,極表層部のみを評価するに留まることが危惧される。そこで本年度は,コンクリート表面からの深さによって異なることが予想される含水率や組織の緻密さに着目し,昨年度に検証・提案したセメントペースト部分をより精密に抽出した削孔速度により,表面からの深さが削孔速度と物質移動抵抗性に及ぼす影響について検討した。本検討では,試験体側面表面および表面から深さ方向に10mmごとに切断した試験体の切断面を対象とした。実験結果より,表層10mmの削孔で得られる削孔速度により,表面から30mmまでの吸水性を評価できることを示した。また,測定面が乾燥した状態であれば,透気性についても評価できることを再確認した。 本助成により実施した一連の研究による成果は,以下にまとめられる。 1) ビット径3mm程度の小径ドリル型削孔試験で得られる削孔速度によって,主要な配合要因である水セメント比の差異を捉えられる。2) 削孔試験跡を利用して,従来の削孔法による透気試験を適用可能であり,より小さな損傷で表層品質の評価が可能である。3) 削孔速度によって,既存のコンクリートを対象とした各種非破壊・微破壊法と少なくとも同等程度は,コンクリート表層の健全性の評価ならびに構造体の圧縮強度を推定できる可能性がある。4) 削孔速度によって,コンクリート・モルタル表層の物質移動抵抗性に影響を及ぼすブリーディング量,透気性,吸水性の評価がおおむね可能である。
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