昨年度までに明らかにしたモデルを実際の屋外環境で実証するために、福井県総合グリーンセンターの舗装した駐車場で夜間実験を行った。被験者として若齢者8名と高齢者12名の協力を得た。実験では、対向車と歩行者が自車の前方70mに位置する片側3.5mの直線道路を想定して実験装置を上述の駐車場に配置した。実験装置は、乗用車、制御マイコン、検出スイッチ、制御PC、乗用車用HL、対向車用HL、三脚6台、視標、各種電源で構成した。実験中、実験者は制御PCを操作して視標の提示と被験者の応答の記録を行った。視標は、歩行者に見立てた、灰色(反射率0.16)の布を被せて垂直に立てた1.3m×0.4mの板とした。視標は、10m手前に配置した視標用ライトで照明した。検出スイッチは、被験者が視標検出を合図するために用いた。視標ライトと検出スイッチを制御PCに接続した。注視点用ライトは赤色のフィルターを貼った懐中電灯であり、被験者から前方70mの位置の地面に置いた。 独立変数は、眼前照度と視標輝度とした。眼前照度は、対向車HLの消灯時、ロービームからハイビームまでを想定した0.16lx、0.4lx、3lxの3水準とした。視標輝度は、5条件を設定した。従属変数は視標の検出率とした。 実験では、被験者は運転席に座り、70m先の注視点を注視し、周辺視野で視標を検出するや否や検出スイッチを押した。以上を対向車HLが消灯、ロービーム、ハイビームの3条件下でそれぞれ8回ずつ繰り返した。 実験の結果、対向車HLの有無は視標検出率に影響を及ぼし、ハイビーム時に比べてロービーム時と消灯時の検出率が有意に高いことを明らかにした。グレア光源による眼前照度が高くなるにつれて検出率は低くなること、高齢者の閾値は若齢者の閾値よりも高い輝度を要することを解明した。昨年度までの実験室実験により構築したモデルと整合することを明らかにした。
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