人間の気流に対する感覚知覚メカニズムを明らかにすることを最終目標として、2019年度は、人体周辺気流のCFD解析手法に関する基礎検討として、人体形状及び人体表面のメッシュ分割方法が人体表面の対流熱伝達率や静圧分布に及ぼす影響について検討を行った。2020年度は、福井大学の実験室においてサーマルマネキン表面の対流熱伝達率測定に用いる熱流センサの測定精度について基礎実験を行なった。2021年度は、風速と室温を制御することができる東京工芸大学の風工学研究センターの実験施設において、人体模型を用いた微差圧計による人体各部位の風圧測定と、サーマルマネキンを用いた人体表面での風圧測定及び対流熱伝達量測定とPIVによる人体表面近傍での風速測定を実施した。また、人体形状周辺気流のCFD解析結果と比較して、解析の精度検証と各物理量の相関について詳細な検討を行った。実験結果と解析結果の比較について、両者の全体的な傾向は概ね一致しており、特に高風速条件では実験値と解析値がよく一致する傾向が見られた。CFD解析では人体表面の詳細な物理量分布が把握でき、既往文献の結果とも比較して局所値と部位平均値では大きな差異が生じる部位があることがわかった。低風速条件では、人体発熱により生じる熱上昇流が人体各部位の静圧を負圧側にシフトさせることがわかった。また、風上側の気流が直接衝突する人体部位においては、人体表面の摩擦速度と対流熱伝達率と静圧に正の相関が見られた。今後実施する予定の被験者実験での条件設定や心理量との比較のための基礎データが得られた。
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