本研究は,開門営業,ドア開閉,顧客の出入りによるエネルギー損失量を定量的に解明し,商業施設における漏気負荷を効率的に抑制させる対策について検討することで,より効果的な省エネ設計・改修手法を提案することを目的とする。 令和1年度には,第1段階研究(文献調査・実態調査,商業施設の正面ファサードにおける熱損失特性)として(1)文献調査・実態調査,(2)ドア部から発生する漏気負荷の検討,(3)ショーウインドーから発生する伝熱負荷について検討した。特に,ドア部から発生する漏気負荷を定量的に検討するために,ドアの基本変数(ドア種類,面積),制御変数(ドア開閉頻度,開閉時間),外乱変数(室内外温度差,圧力差)などの条件変動によるパラメトリックスタディを行い,非定常条件での空気流動による漏気負荷を定量的に検討した。また,ショーウインドーの形態,店舗面積に対する面積比,ガラスの断熱特性などによる伝熱負荷を把握し,ガラスの断熱性能を向上させる技術について検討した。 令和2年度には,第2段階研究(商業施設における省エネ設計・改修技術の検討)として(1)エアカーテン及び回転ドアの設置による効果,(2)ショーウインドーの性能向上による効果について検討した。特に,店舗の運用実態(人や荷物の出入り頻度等)を反映したエネルギーシミュレーションを行い,漏気負荷の抑制効果がどの程度空調エネルギーの削減に寄与するのかを定量的に検討した。また,ガラスの断熱性能を入力条件とし,伝熱負荷の抑制効果がどの程度空調エネルギーの削減に寄与するのかを検討した。 令和3年度には,商業施設における効果的な改修手法の提案するため,気候地域によって異なる漏気負荷特性を検討し,今まで行った検討結果を纏めた。 以上の検討結果を研究成果物として,2019年に7編,2020年に7編,2021年に2編の論文を発表・掲載した。
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