研究課題/領域番号 |
19K04728
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
永井 久也 三重大学, 工学研究科, 教授 (40283402)
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研究分担者 |
岩田 剛 三重大学, 工学研究科, 技術専門員 (20636542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然排煙 / 直線中廊下 / 排煙性状 / 回廊型中廊下 |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、「非火災空間である中廊下に火災発生空間からの漏煙があった場合の、片側排煙の自然排煙性状の定量的検討」および「非火災空間 である中廊下に火災発生空間からの漏煙があった場合の、自然排煙性状に与える外気風の影響の定量的検討」を汎用のCFDコードにより行った。具体的には、ホテルあるいは集合住宅を対象とした最大30mの直線中廊下の片側のみに法定面積の自然排煙口を設けた場合に、ホテル客室での火災により廊 下に漏煙した場合の廊下における煙層下降時間と階避難時間の比較によりその効果を検討した。結果として、直線中廊下片側の排煙では、十分な排煙性能を期待できないことを明らかにし、外気無風条件下では、廊下の両端にどの程度の排煙・給気口が必要かの定量的検討した。また、超高層建築物にしばしば採用される回廊型中廊下に自然排煙方式を採用した場合の廊下の排煙性状を、上記と同様にCFDにより定量的に検討した。この結果、回廊型中廊下の場合は、廊下端部一か所に自然排煙口を設けた場合のみならず、廊下両端部に排煙口を設けた場合でも、回廊の隅角部には熱・煙溜まりが生じやいため、回廊型中廊下の排煙は火災防災上問題が大きいことが明らかとなった。 また、上記で示した、直線中廊下型で外気無風時に、比較的良い排煙性状を示した開口条件下の場合に外気風が生じている場合、さらに無風時においても排煙上問題であった回廊型中廊下の建物に外気風が生じた場合の排煙性状の検討を着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同住宅、ホテル、商業ビル等の建築物の避難経路となる共用廊下は火災安全区 画としての機能が要求されるため排煙設備の設置が義務付けられており、現行のル ールでは、通常の火災発生の可能性の高い居室と同様のルールによりその最小排煙 口面積や排煙口間距離が規定される。したがって、中廊下型あるいは回廊型の集合 住宅やホテル等においては、その長さが30m以下である場合には、廊下の床面積は比 較的小さい場合が殆どであるため、その一方の端部のみに規定面積以上の自然排煙 口を設ければ、法的な基準を満足する場合が殆どである。また、機械排煙方式の場 合についても、最長60mの廊下中央に機械排煙口を一つ設ければ、同様に法的基準 を満足し、現実的にこういったケースの建築物は非常に多い。研究初年度である本年度は、比較的単純な直線中廊下及び超高層ビルでしばしば計画される回廊型中廊下に自然排煙方式を採用した場合の廊下の排煙性状をCFDにより定量的に検討したが、当初予測していた通り、単に建築基準法を満足した排煙口では、隣接する居室で発生した火災の漏煙を十分に排煙することは難しいことを定量的に明らかすることができ、さらに、どのような開口条件が必要であるかとういう定量的目安を明らかにすることができたため、その進捗は概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度である令和2年度においては、第一年に行った直線中廊下および回廊型中廊下に通常の定常外気風が生じている場合の排煙性状の影響を継続する。また、本研究目的の第一番目の項目である「非火災空間である中廊下に火災発生空間からの漏煙があった場合の、自然排煙時の 漏煙量と排煙口面積の関係の定量的検討」、「非火災空間である中廊下に火災発 生空間からの漏煙があった場合の、機械排煙時の漏煙量と排煙口間距離の関係の定 量的検討」の検討を行う。ここでの検討は本研究の第二番目の目的である「火災時 の排煙設備の簡易設計法の確立」のための基本情報となるが、特筆すべき点は、排 煙のための給気面積の定量的検討が挙げられる。現在の建築物は非常に気密性が高 く、例えば、僅か0.5回/時程度の通常の24時間換気でも、給気口が閉鎖されている場 合には、扉や窓と開閉に支障を来すほどであるため、例え自然排煙方式の場合でも、 排煙口面積と共に適切な給気口面積も検討する必要性が高いため、これらについて CFDにより定量的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初の予定とおりに執行したが、当然のながら端数が発生した。 (使用計画)研究に必要な消耗品等の一部に使用する。
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