再生可能エネルギーや廃熱などを最大限利用するため,複数の熱源からの冷熱や温熱をその温度や熱量に応じて蓄熱し,冷暖房や給湯などの温度レベルの異なる複数の用途に利用することが可能な蓄熱システムの開発を最終目的としている。本研究課題では,蓄熱槽として,高さ方向に複数の流入出口を設けた温度成層型蓄熱槽を対象とし,蓄熱槽の基本性能の把握と槽内温度性状を予測するための槽内混合モデルの開発,多様な熱源で構成されたシステムを想定したシミュレーションによる性能評価を目的としている。 2021年度は,温度成層型蓄熱槽のような乱れの抑制効果が高い流れの解析に用いられている乱流モデルを用いた数値流体解析を行い,実験結果の槽内鉛直温度を精度よく再現できることを確認した。次に,実験では不可能な条件を含む,複数の温度帯の蓄熱を想定した解析を行い,複数の温度成層が形成される蓄熱槽に任意の位置(高さ)において流入出がある場合の,槽内温度を予測するための槽内混合性状のモデル化を行った。流入温度と流入位置の槽内温度が異なる場合に対し,流入水を密度噴流として取り扱って,流入水と槽内水の混合性状をモデル化した。開発した槽内混合モデルによる槽内温度分布の結果は,数値流体解析の結果とおおむねよく一致し,大幅な計算時間の短縮が実現できた。最後に,事務所ビルを想定した冷房負荷に対し,低温冷水を用いる外調機と中温冷水を用いる室内顕熱空調機からなる2次側システムに,複数温度帯の蓄熱槽を組み合わせた空調システムを想定したシミュレーションを行った。その結果,熱需給の調整,中温冷水の所定の温度での蓄放熱等の想定した運転が実現可能であることが確認でき,負荷特性や熱源運転制御方法に応じて流入口設置数を抑制できることを明らかにした。
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