研究課題/領域番号 |
19K04731
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
齊藤 雅也 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (20342446)
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研究分担者 |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
伊澤 康一 福山大学, 工学部, 准教授 (60530706)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 想像温度 / 温度想像力 / 住みこなし / 熱環境 / 地域性 |
研究実績の概要 |
地域の気候風土を活かす「住みこなし」を実現するための条件を明らかにするため、ヒトの想像温度を尺度とした「温度想像力」が養成されるかを2020年の春・夏季に被験者実験によって確認した。被験者は、札幌・福山・熊本の大学生と大学職員(札幌・熊本は2019年度と同一)で、1日3~5回程度、任意の空間の温度を想像し記録後に、携帯している空気温湿度計が示す実際の空気温度の示度(以下、実際温度)を記録してもらった。2019年度と比較した結果、以下が確認できた。 地域・季節を問わず、任意の空間の温度を想像し、実際温度を確認する機会があることによって、想像温度と実際温度の差が小さくなった。この傾向は、想像温度の申告回数が増えるにつれて強まっていた。つまり、ヒトの「温度想像力」が養成されることが確認できた。また、本実験を通して想像温度が実際温度に近いという「自信がついた」人は、「自身がない」人より想像温度と実際温度の相関が高かった。さらに、2019年度から2020年度にかけての約1年の計5回の実験を経て、自分が過ごす空間の温度(熱環境)への意識が高まっていた。実験は、被験者が想像温度の申告後に実際温度を確認する作業を繰り返し行なう方法であるため、毎申告時の熱的刺激に対する感覚に加えて、その時々の空気温度の示度情報の蓄積が「温度想像力」の養成につながったと考えられる。また、「温度想像力」が備わったことによって、被験者の環境調整行動の意識も生まれ、自身が過ごす空間を快適にしようとする意識が見られた。 また、2019年夏に札幌市内に竣工したオフィスのスタッフ(13名)を対象に「住みこなし」が現れているかを評価するために想像温度の尺度を活用した調査を竣工後1年で3回実施した。各スタッフの想像温度の申告幅が徐々に小さくなるとともに「不快」申告が減り、「住みこなし」が現れていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染防止対策により、当初、2020年度に計画していた「住みこなし」の実態調査ができなかったが、その他については概ね順調である。今後、実態調査については研究計画の一部を見直し、感染防止対策を踏まえて実施できる方法を再検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染を防止する対応として、「すみこなし」の調査は、被験者を当初の計画の一般市民から、研究代表者・研究分担者の所属機関(大学):札幌・福山・熊本の大学生に変更し、各大学の感染防止対策を講じたうえで調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大を受けて、3地域間(札幌・福山・熊本)における被験者実験を実施するための研究代表者・研究分担者・研究協力者の移動のための旅費の支出がなくなり、各地域で実験を執り行うように変更した。今後、国内における感染状況を確認したうえで3地域における実験、実測を実施する予定である。
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