環境影響を定量化するLCAは、以前にも増して必要性が高まっている。建築分野では、省エネ・省CO2の視点のみで分析されることが多いが、マルチクライテリア(多様な環境負荷物質を評価すること)での評価が本来の姿と認識する。本研究は、分析作業の負担を軽減しつつ、マルチクライテリアでの評価を可能にする評価手法(指針)を提案し、必要な原単位データベースやツールも構築することを目的として実施した。 (a)建築物評価用の指針の提案 約10件の住宅を中心としたモデル建物の分析を通し、マルチクライテリアでの評価で支配的な要因となり得る投入原材料を明らかにした。概算や精緻な分析などの目的に応じ、最低限収集すべき投入原材料データ等を明らかにできた。これらをもとに評価の指針を提案した。 (b)設計のこだわりを反映できる原単位データベースの提案・構築 現在公開されているIDEAを用いて建築物を評価しようとすると、設計のこだわりを評価できるデータが不十分、材料の単位換算データ(例:単価、m2あたり投入重量など)の不足、輸入建材の評価ができないなどの課題があった。業界のニーズを踏まえつつ、これらの原単位の構築手法を提案し、必要性の高い項目については原単位も構築できた。 (c)作業負荷を極力軽減できる評価ツールの提案・構築 IDEAを前提とした建物のLCA評価ツールを提案し、ツールを構築した。作業負荷を極力軽減するため、一度適切に評価すれば、エコリーフなどの評価にも軽微な修正で適用できるツールを提案した。
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