研究課題/領域番号 |
19K04735
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
吉野 一 日本工業大学, 建築学部, 教授 (60792554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 介護空間 / 空気環境 / におい / 換気 / 局所換気装置 / 捕集率 |
研究実績の概要 |
特別養護老人ホームでは加齢による体臭、糞便臭と尿臭が発生するが、特に気になるのはおむつ交換時の糞便臭である。介護者や在所者の快適 性維持や省エネルギーの観点からこのような臭いを効率的に除去することが重要である。現状の臭い対策としては換気扇や空気清浄機あるいは芳香・防臭剤などが行われているが、おむつ交換時の糞便臭は局所的に発生することから、発生源近くで捕捉・排出する局所換気が有効な手段である。本研究では可搬型局所換気装置を開発し、介護空間においてこれを適用する方法を提案する。 今年度は昨年度実施した数値解析により高効率な局所換気システムを作成した。一般的なフランジタイプの局所換気システムと本研究で開発しようとしている高効率な局所換気システムに対して介護空間を再現した実験室において捕集率の測定を行った。フランジタイプの局所換気システムはエアコンの吹出し気流によって捕集率が低下する結果となった。特に暖房時では鉛直下向きの吹出し気流によって局所換気装置周辺の気流場が乱される傾向が大きい。一方、高効率な局所換気システムはフランジタイプと比較するとエアコンの気流による擾乱の影響が小さく捕集率がやや高い傾向にあったが、一部改善が必要となる箇所もあった。 実験と同様にフランジタイプと高効率な局所換気システムを数値計算でモデル化し、捕集率を検討した。実験同様、フランジタイプはエアコンの吹出し気流によって捕集率が低下し、高効率な局所換気システムは捕集率がやや高い傾向になったが、実験の捕集率と数値計算の捕集率には捕集率に差異が生じていた。これは実験(Stop法)と数値計算(直接捕集率)での捕集率の算定方法が異なることによる。したがって、数値計算においても実験と同様な捕集率の算定方法を適用し検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実大実験用の介護空間を構築し、各種局所換気システムの捕集率を測定することと、これを数値解析でモデル化することが今年度の目標であったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言が発出されたことなどにより、当該研究を実施するための充分な時間が取れなかったことによる。 ただし、研究を遂行するための課題が発見できたので次年度はこれらの課題を改善したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度明らかになった課題について改善することを最優先とし、再度、実験室において捕集率の測定を行う。また、実験室を数値解析でモデル化し、各種局所換気システムの捕集性状などの詳細を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値解析では非構造格子系CFD解析ソフト、一方、実験では捕集率測定のために必要な高応答性CO2測定器と校正用標準ガス、CO2ならびにHeガスのマスフローコントローラ、レギュレータ、実験用データ収集PCを購入したが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当該研究を実施するための充分な時間が取れなかったため、予定していたCO2ならびにHeガスなどの消耗品が多く消費しなかったことや、研究協力者の出張が困難だったため、予定額より少なくなった。 したがって、次年度は「今後の研究の推進方策」に記したとおり、再度、実験室実験および数値解析を実施すべく予算を使用したいと考えている。
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