研究課題/領域番号 |
19K04743
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
羽入 敏樹 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (70299981)
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研究分担者 |
星 和磨 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50373171)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 拡散度 / 室内音場 / 音響障害 / フラッタエコー / 時系列変動係数 / 周波数変動係数 / 指向拡散度 / 減衰除去インパルス応答 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「音場の拡散度」の指標によって音響障害を定量評価する手法を確立することである。そのため研究期間内に,1)「音場の拡散度」の指標の確立と,2)「音場の拡散度」の指標による音響障害の発生確率の予測手法の確立を目指す。 令和2年度は以下の成果が得られた。1,1/10縮尺音響模型実験用の方向情報解析システム構築のため,小型カーディオイドマイクロホンの機種選定を実施した。カーディオイドマイクは測定システムの性能を決定づける重要な要素となるため,まずはメーカー仕様書から2機種に絞り,各マイクの周波数毎の指向特性を詳細に測定した。その結果を基に性能比較して最終的に使用するマイクを選定した。多チャンネルマイクシステムのためのマイクジグの設計は完了したが,実際の制作については次年度に持ち越した。2,方向情報を考慮した「音場の拡散度」の指標として,音響インテンシティーを基にした音場の「指向拡散度」を新たに定義した。「指向拡散度」を計算する際の空間分割数や解析対象の時間範囲など様々な条件について,シミュレーションや実音場の測定データを基に検討した。その結果,直接音を除いた時間範囲を解析対象とすることで,音場の拡散度の違いをより明確に評価できる可能性が示された。さらに,当研究室で開発したインパルス応答から減衰を除去した“減衰除去インパルス応答”を用いる方法も有効であることがわかった。3,音響障害の発生確率の予測手法の検討については,昨年度までに有効性が示された“時系列変動係数”と“周波数変動係数”による“フラッタエコー発生確率評価”の有効性を追加実験によって確認した。さらに,今年度新たに定義した“音響インテンシティーによる指向拡散度”の有効性についても検討を始めた。4,研究成果を日本音響学会,オンラインジャーナルApplied Scienceに発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画は以下の通りであった。1,1/10縮尺音響模型実験用の方向情報解析システムの構築,2,「音場の拡散度」の方向情報を考慮した指標の検討,3,音響障害の発生確率の予測手法の検討。 1については,1/10縮尺音響模型実験用の方向情報解析システムの性能を決定づける重要な要素となる小型カーディオイドマイクロホンの機種選定を実施した。まずはマイクのメーカー仕様書から我々のシステム要求性能を満たす2機種に絞り一本ずつ購入した。入手した各マイクの周波数毎の指向特性を詳細に測定し,その結果を基に性能比較して最終的に使用するマイク一機種を選定した。多チャンネルマイクシステムのためのマイクジグについては,設計は完了したが実際の制作については次年度に持ち越した。 2については,方向情報を考慮した「音場の拡散度」の指標として,音響インテンシティーを基にした音場の「指向拡散度」を新たに定義した。「指向拡散度」を計算する際の空間分割数や解析対象の時間範囲などについて,シミュレーションや実音場の測定データを基に検討した。空間分割数を増やすにしたがい指向拡散度の値は一定値に収束した。その結果から最適な空間分割数の指針が得られた。さらに,解析対象の時間範囲については,直接音を除いた時間範囲を解析対象とすることで,音場の拡散度の違いをより明確に評価できる可能性が示された。 3については,昨年度までに有効性が示された“時系列変動係数”と“周波数変動係数”による“フラッタエコー発生確率評価”の有効性を追加実験によって確認した。“時系列変動係数”と“周波数変動係数”は音の方向情報が考慮されていないため,今年度新たに,音の方向情報を含む“音響インテンシティーによる指向拡散度”を新たに定義した。この指向拡散度の有効性についても検討を開始した。 以上により,研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究計画は以下の通りである。1,1/10縮尺音響模型実験用の方向情報解析システムの完成,2,「音場の拡散度」の指標と「音響障害の発生確率」の関係を基にした音響障害評価指標の提案と検証を完了,3,音響障害の評価指標が実音場で適用可能かどうか検証実験の実施。 令和2年度は,「音場の拡散度」の方向情報を考慮した指標の提案と,それを基にした音響障害発生確率の予測手法の可能性に関する基礎的検討であった。令和3年度は,音場の方向情報を考慮して音響障害を評価する方法を最終的に提案するために以下について取り組む。1,1/10縮尺音響模型実験用の方向情報解析システムの構築については,マイク選定は完了したものの,マイクジグの制作が令和3年度に持ち越された。できるだけ早期に完成させ,完成させた方向情報解析システムを駆使して様々な条件における方向情報をデータベース化する。2,昨年度までに有効性が示された“時系列変動係数”と“周波数変動係数”に加え,音の方向情報を含む“音響インテンシティーによる指向拡散度”についても,引き続き聴感実験を実施し,その結果を基に「音場の拡散度」の指標と「音響障害の発生確率」の関係を明確化し,音響障害の評価指標を確立する。3,聴感実験で有効性を確認した音響障害の評価指標が実音場で適用可能かどうか検証実験を実施する。これらの検討を通じ,最終的に「音響障害防止の設計スキーム」の提案を目指す。4,研究成果を審査付論文として投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の研究計画であった聴感実験の一部を令和元年に先行実施した。そのため,令和元年度に予定していた1/10縮尺模型実験用の方向情報解析システムの構築を令和2年度に移行した。令和2年度は,1/10縮尺模型実験用の方向情報解析システムの構築に必要な小型指向性マイクロホンを選定して複数購入したが,マイクロホンを組み合わせるジグ製作については設計が完了したものの,実際の制作は令和3年度に持ち越した。そのため令和3年度にはジグ製作費用,実験材料費,および研究成果の研究発表や論文投稿のための費用が発生する。
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