研究課題
タイでは2011年に大規模な洪水があり、バンコクを含む中部タイ地域を中心に甚大な被害を及ぼした。しかし、小規模な洪水は各地で生じており、洪水を受け入れながら居住環境の維持管理が行われ、減災の仕組みが年中行事に組み込まれるなど固有の居住文化が形成されてきた。本研究では、地形的にも浸水が長期化する中部タイを対象として、洪水を受容した居住環境の維持管理の仕組みやその変容を明らかにし、地域に見られる減災の知恵や工夫を居住文化として捉え、それらを継承する防災教育の教材を制作することを目的としている。今年度は、コロナ後の海外調査が再開でき、近年の洪水時の対応についてコミュニティレベルでのヒアリングを実施することができた。また、コロナ禍を受けて長期浸水する国内地域での調査を昨年度に引き続き実施した。河川に囲まれた低地でかつては頻繁に洪水が発生し、長期浸水する群馬県板倉町周辺地域 において、長期浸水時に生活を継続するための水防建築の現存状況調査、水防建築の使われ方や舟の利用、備蓄米をはじめとする長期避難生活に対応するための備えなどについて文献調査と現地調査を行い、実態と変容を明らかにした。カスリーン台風の被害の大きさによって町内での洪水対応、水塚の保存意識などに違いがあることが明らかとなった。さらに、同町内で実施したWSにおいて作成した郷土かるたトランプを活用して、小学校で水場のくらしかるた大会を開催し、洪水対応を含めて住環境の特徴への理解を深め、地域の洪水対応の知恵や工夫を継承する防災教育を実施し、事前事後シートや感想文などから災害経験が伝承されることに一定の効果が見られたことを明らかにした。
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The 5th International Conference on Civil and Building Engineering Informatics,
巻: 2023 ページ: 536-541