研究課題/領域番号 |
19K04749
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 雄二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70516210)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 障害者 / 障害者支援施設 / 個室ユニット / 空間構成 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、主に重度の障害のある障害者の住まいの場として想定されている「障害者支援施設」について、(1)求められる居住空間の建築的要件、(2)生活に対応した空間機能、(3)地域との関係を生み出す施設計画要件の、3点を明らかにすることを目的としている。3カ年の研究機関のうちの2年目の2020年度においては、昨年度全国の障害者支援施設2477施設に対して行った悉皆アンケート調査(1151施設より有効回答を受領、有効回答率46.5%)の結果を分析し、施設を対象障害(知的型、身体型、混合型)に分類した上で、以下の様な結果を得ている。(1)全個室は24.4%、生活単位の分割は16.9%、昼夜分離は73.0%の施設で実施されている。(2)居室定員は、身体型に比べ知的型で有意に少ない。(3)全個室かつ生活単位の定員が10人以下である施設(個室ユニット型施設)は44施設で、有効回答を得た施設のうち3.8%であった。 本研究を構想していた段階では、2020年度からは訪問によるヒアリング調査や観察調査の実施を予定していたが、昨今の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響で、これらが不可能となった。そのため2020年度は予定を変更し、受領した平面図を分析することとした。結果として、身体型では知的型に比べ1人あたり居室面積が有意に大きく、昼夜分離を実施している施設はそうで無い施設にくらべ活動室面積が有意に大きいこと、また個室型施設は多床室型施設に比べ有意に面積が大きいが、個室型施設の間(ユニット型施設と従来型施設)では差が見られなかった。 これらの分析に加え、2020年度は全国の障害者支援施設2484施設を対象に、新型コロナウイルス感染症対策の実態に関する悉皆アンケート調査も行い、1051施設より回答を得た(有効回答率 42.3%)。現在、この結果を分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を構想していた段階では、個室ユニット型施設、かつ地域との関係創出に成功している事例を抽出し、前者については観察調査、後者については訪問によるヒアリング調査の実施を行う事を予定していた。特に、2020年においては前者の観察調査の実施を予定していたが、昨今の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言等の影響で、訪問による調査が不可能となった。そのため2020年度は予定を変更して、受領した平面図を分析することとした。ただし、これは昨年度の研究実施状況報告で示した今後の研究の推進方策の内容とは一致しており、その意味では順調に進捗しているとも言える。加えて、本年度は全国の障害者支援施設を対象とした、更なるアンケート調査を実施した。内容は新型コロナウイルス感染症対策の実施に関するものであり、これは研究開始時には予想していなかった調査項目であるが、現状を鑑みると、今後の施設計画には欠くことのできない視点であり、今後建替えが多く予想される障害者支援施設の計画に極めて大きな意味を持つという意味で、研究の当初目標と一致している。その意味で、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度については、引きつづき新型コロナウイルス感染症の状況が、本研究の推進方策に大きく影響する状況である。現在(2021年4月10日)、「第四波」と呼ばれる感染者数の再拡大期にあり、東京都や大阪府の一部自治体においては、まん延防止等重点措置が発令され、引きつづき訪問によるヒアリング調査や観察調査は極めて困難な状況である。 他方で、昨年方針を変更して行った平面図分析調査では、個室・多床室の違いによる面積構成の違いや、障害種別による面積構成の違いなど、極めて重要な点が明らかになった。今年度は、引きつづきこれらの分析を進展させ、今ある情報でより多くの知見を得るべく分析を進める。加えて、昨年度新たに行った新型コロナウイルス感染症対策の実態に関するアンケート調査も、多くの施設より回答を得た。研究最終年度である本年度は、これらの調査結果の分析を進めることにより、結果として研究当初の目的である、今後の障害者支援施設に求められる建築計画的な指針をまとめることを目指すこととする。 ただし、今後ワクチン接種の進展などにより新型コロナウイルス感染症の状況が改善し、施設の訪問が可能になれば、訪問によるヒアリング調査については実施することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、訪問によるヒアリング調査・観察調査の実行ができなかったため、旅費の使用が少なく、結果として次年度使用額が生じた。2021年度において、訪問による調査が可能となった際には、改めて旅費として使用する計画である。
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