研究課題/領域番号 |
19K04751
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小松 尚 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242840)
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研究分担者 |
小篠 隆生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00250473)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学校 / 施設 / 廃校 / コミュニティ / ハブ |
研究実績の概要 |
学校および廃校を市民の今日的なニーズに応える公共サービス提供拠点であるコミュニティ・ハブとして再構築するために、2020年度は次の研究を行った。 ①学校教育や地域活動の拠点として機能しているケースだけでなく、少子化の進行により廃校となった後の学校建築の利活用に関する研究に関して2019年度に実施した廃校利活用の研究を継続した。具体的には、2020年度は市民の主体的な活動の目的やその利用者、活動内容を問わずに貸し出されるスペースを「自由活動スペース」と定義し、全国廃校活用MAPを利用して307事例を抽出し、そこから自由活動が行われている195事例、さらに平面図が入手できた54事例について、廃校を利活用した地域交流施設における自由活動スペースの空間特性を分析した。成果として、室名から読み取れる自由活動スペースと貸出形態の組み合わせから、最も多様な交流を生み出していると考えられるタイプを確認した。 ②研究代表者が2018年12月に共同出版した著書『「地区の家」と「屋根のある広場」 イタリア発・公共建築のつくりかた』をベースに、日伊のオンライン国際セミナー「ウィズ&アフターコロナの「みんなの場所」」を2020年12月と2021年3月に計3回開催した。その中で、日本における「みんなの場所」として、学校の存在や役割について討論した。 ③研究代表者が助言、指導し、2020年2月に竣工した中学校と公民館の融合的施設(松阪市鎌田中学校と第四公民館)について、2020年度の利用状況について関係者へのヒアリング調査を実施し、計画時に想定した学校と公民館の共存的利用や運営が順調に行われていることを確認した。 ④コミュニティ・ハブに関連の深い「まちの居場所」に関する継続研究と、建築学会主催の研究会で研究発表(招待講演)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は国内外における新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響を大きく受け、2020年度に予定していた国内外の事例調査は実施できなかった。しかし、廃校を利活用した地域交流施設における自由活動スペースの空間分析を実施できた。また、イタリアの研究者等を招いて国際研究セミナーを3回開催して、コミュニティ・ハブに関する可能性や課題について議論できた。さらに「まちの居場所」に関する継続研究や、2021年度以降に中学校と公民館の融合的改築事業の評価を行うための予備調査を行うことができた。コロナ禍における研究実施上の制約は多々あったため、このように研究の対象や方法の再調整を行う必要はあったが、コミュニティ・ハブとして学校空間を再構築するための計画研究という本研究課題の目的に沿って研究活動を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響は避けがたいため、当面は空間や運営に関する公開データ(例:自治体や当該施設がウェブ上で公開している情報)等を入手し、その分析を行いつつ、またこれまでの研究成果を取りまとめル予定である。また、コロナ禍の状況を見ながら、公共施設再編の一環として中学校と公民館が融合的に改築され、2020年2月に竣工した事例(松阪市鎌田中学校と第四公民館)について、学校及び公民館関係者に対するヒアリング調査や利用実態調査を行いたいと考えている。そして、廃校利活用と学校と他施設の複合施設に関する研究成果もふまえながら、コミュニティ・ハブとして学校空間を再編するにあたっての提言を示したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により国内外への研究目的の出張が殆ど実施できなかったため、次年度に繰り越した。2021年度は最終年度であるため、各種成果発表等の経費として使用予定である。
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