応急仮設住宅は、災害救助法により2年間で取り壊されることになっているが、2016年熊本地震で整備された木造仮設住宅は、最初から恒久住宅に近いものを建設し、仮設期間終了後も本設として利活用できるよう工夫している。現代の木造住宅は、人工乾燥材・集成材の規格化やプレカット技術の発展によって、鉄骨プレハブと大差ない期間で建設できる状況がある。もし最初から地元の施工者が本設住宅へと転用しやすい仮設住宅を建設できれば、資源の有効活用と持続可能性、自立再建力のない被災者の負担軽減、そして速やかな地域経済の復興にもつながる。 本研究は「 仮設住宅を一定期間の後に本設として活用するための必要要件と課題」を明らかにすることを目的としている。 これまでに、木造仮設住宅の建設を進めた行政関係者へのヒアリングを実施し、その供給経緯と今後の本設住宅への転用方法、法規・制度上の問題解決方法、そして市町村内での住宅の位置付けについて確認した。こうした調査の過程で、仮設住宅建設用地の確保に際した土地転用問題、本設住宅に転用しやすい木造仮設住宅の計画技術、仮設から本設まで住み続けている自立再建力のない住民への対応、仮設住宅団地の集会所として建設された「みんなの家」の移設等々の課題が明らかになった。 コロナ禍のために、2020年度、21年度は、現地での調査がほぼできなかった。2022年度は、行動制限も緩和されたため、研究をまとめるために不足していた、実際に本設へと転用された仮設住宅に関する情報を追加し、その後建設された木造災害公営住宅や、2020年7月豪雨で被災した熊本県南部に建設された808個の仮設住宅の計画について、熊本地震での経験がどのように生かされたかについても確認した。22年度末までには、熊本地震被災者のために建設されたほぼ全ての仮設住宅が閉鎖され、その時点で得られた研究成果をまとめた。
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