研究課題/領域番号 |
19K04758
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
馬場 正尊 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (70515197)
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研究分担者 |
中江 研 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40324933)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リノベーション / 都市空間 / リノベーション / 公民連携 / 暫定利用 |
研究実績の概要 |
海外事例については、オランダのリーマンショック後に再開発計画が凍結され、放置されていた造船所とその周辺エリアの活性化状況について、現地でインタビュー調査し、そのメカニズムの分析を行った。最初期にクリエーターを中心とした小規模な民間組織が小さな仮設建築の集積によって暫定的に利用をはじめたものが、その後、その新規性に着目したテレビ局等の資本参加により、その暫定的状況から多様な情報発信が行なわれ、場所そのものがメディア化した結果、再開発計画を停止し、暫定利用が継続されることになったことを把握した。 また、イタリアにおけるアルベルゴ・ディフーゾ(拡散されたホテル、以下AD)に関して、イタリアの州または県とイタリア国立AD協会、各ADの関係に着目し、歴史地区保全・活用の施策の一つとなっているADの実態を法制度とその運用の観点から調査・分析を行った。日本では従来、国立AD協会に加入するADのみが注目されてきたが、ADは各州法において定義され、補助金や融資の制度があること、また国立AD協会の方針を必ずしも良しとせず、退会するADも生じている現状などを把握した。 国内事例については、DIYでつくれる簡易な屋台的なしつらえを用いた調査や、豊島区などにおいて公園や道路などの屋外の公共空間で社会実験を行うことにより、エリアの変化をどう誘発するかの実践的研究を継続している。その実施、調査の内容は、国土交通省が制度化を急ぐ、ウォーカブル推進都市へのノウハウのフィードバックなどを行うなど、PDCAサイクルを回しながらの研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、予定していた調査の一部が実施できなかったため、やや遅れているものと評価した。 年度末に予定していた海外調査が渡航不可となり、未実施の状況である。また国内で予定していた公園や道路などの公共空間を暫定的に活用する社会実験も、上記の理由で延期となった。 新型コロナウィルスの感染拡大よりも前に調査を行なっていたものは、分析・考察を行ない、一定の研究成果を得ている。一方で、昨年度末に調査し、今年度に分析を予定していた事例の現地調査が未実施であり、代替として、海外の実践者や研究者に対し、メールやSkypeなどでの取材により情報を収集している。調査手段が限定されていることにより、今後影響が生じてくるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の事例調査・分析により、停滞した地域の活性化においては、大規模な投資を必要としないアド・ホックな仮設建築や、不確実性のある中長期の需要予測を放棄し、直近のニーズに対応した暫定利用による、その場所の実験的な利用の重要性が把握された。こうした実験的な動きをどう誘発し、かつ有効性の高いものをどう継続させていくかが、公共や資本の役割である。こうしたことから、今後の研究においては、当初計画の事例調査において、上記の点の調査・分析に注力していくものとする。また、研究と並行して進む、公共空間を核としたエリアリノベーションの具体的なプロジェクトが、佐賀、山形、豊島区などで進行している。これらの社会実験の成果を研究にフィードバックする。 加えて、上記の実験的な動きは、現時の新型コロナウィルス感染症による経済停滞からのリ・スタートにおいてもきわめて重要と考えられる。密に集まることを回避する動きにより、人々のアクティビティを室内から屋外へと向かわせる傾向はさらに強まっている。本研究で対象としている公園や道路などの公共空間の存在価値が改めて認識されることになった。国土交通省が道路活用のガイドラインを新たにし、道路活用の可能性はより高まっている。この短期間で、国内外で様々なトライアルが行われていることから、それらも本研究の対象に含め得るよう、当初計画の調査対象を一部変更する。 なお、現在、海外渡航に関する状況が不確定なため、研究手法を再構築する必要も想定される。必ずしも現地取材だけではなく、リモートでの取材や映像の共有などを駆使し、このような環境の中でこそ行うことができる研究を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、予定していた海外調査の一部が行なえなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 当初計画を達成するために、海外調査の計画そのものを今年度以降に繰り越して使用する予定であるが、今後も海外渡航ができない場合は、国内事例の調査と社会実験に重点をおいた研究にシフトする。
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