研究課題/領域番号 |
19K04758
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
馬場 正尊 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (70515197)
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研究分担者 |
中江 研 神戸大学, 工学研究科, 教授 (40324933)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エリア・リノベーション / 公民連携 / テンポラリーアーキテクチャー / 仮設建築と社会実験 / エリアマネジメント / 都市経営 |
研究実績の概要 |
2023年はコロナ禍で延期していた海外での事例調査を行った。 ロンドンではバターシー火力発電所をリノベーションし、大規模な複合商業施設へと再生した事業モデルと空間を調査した。また、キングスクロス・エリアの再開発の事業スキームや企業誘致によるエリアの活性化のプロセスの実見及びインタビュー調査を行った。これらはアラブ諸国やインドネシアなどの国外から大規模な投資を導入し、公共資産を民間投資によってドラスティックに開発するグローバリズム型のリノベーションモデルであった。 特に重要であったのが、スコットランドのグラスゴーで、小規模な廃工場がシビックハウスと呼ばれるコミュニティスペースとして再生され、それをきっかけとしたエリアリノベーションが展開しつつある事例であった。特徴的なのは、この運営会社Agile Cityがイギリス独自の会社制度であるCIC(Community Interest Company:コミュニティ利益会社)であることである。同社は、2つの廃工場をリノベーションし、それらをワークスペースとイベントや制作用のスペースとしてレンタルすることを主な収益源としている。民間企業とは異なり、生み出された利益は個人や株主に支払われることはなく、施設の改善、イベントやプロジェクトの実施に再投資されている。同社の仕事はすべて、グラスゴー北部の運河周辺の歴史的・文化的文脈に根ざしたもので、この再投資サイクルが地元経済と地域の再生に長期的なプラスの影響を与えることを目指している。「コミュニティの利益」を追求することが法的に規定されていることにより、自治体も支援や連携が行いやすく、地元電力会社も廃工場をパッシブハウスとして改修する事業に多額の助成を行っている。エリアリノベーションの継続性を制度、組織、ファイナンスの面からどのように整備できるかを知ることのできる重要なモデルが把握された。
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