研究課題/領域番号 |
19K04760
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岡本 肇 中部大学, 工学部, 准教授 (50513355)
|
研究分担者 |
永野 聡 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (80609149)
臼井 直之 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 助教 (50790185)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 事業所数 / 常用従業数 / 製品出荷額 / 事業所立地動向 / 減少・衰退 |
研究実績の概要 |
今年度の実績として、主に研究目的Ⅰ.陶磁器産業地域の1980年代以降(衰退期)における陶磁器関連施設の空間変容と現況の立地状況の実態を明らかにするために行った、以下の作業結果があげられる。 経済産業省指定伝統工芸品に指定された陶磁器産業の国内産地(47市町村)の1)基礎情報(事業所数、常用従業者数、製品出荷額数、付加価値額等の推移(1986年~2018年))と、2)立地動向の推移データ(2011年~2018年)を、RESASで公開されているデータを基に作成・分析した。これらの分析から、この約35年の間に相当な数の陶磁器関連の事業所等が陶磁器産業産地から消失しており、産業としても衰退していることを定量的に把握できた。また事業所の集積度も下がっていることもある程度確認できた。これらの結果は、これらの市町村の域内で多くの空き事業所が発生しており、また跡地がマンションや大規模商業施設等の陶磁器産業地域の地域文脈に沿わない猥雑な空間に変容してしまっている可能性が高いことを示唆していると考える。把握できた主な具体的な内容は以下の通りである。 ・1)基礎情報の47市町村計において、事業所数は4994箇所(1986年)から1530箇所(2016年)に減少(69.6%減)、常用従業者数は78,172人(1986年)から27,862人(2016年)に減少(64.4%減)、製造品出荷額等は930,229百万円(1986年)から593,481百万円(2016年)に減少(36.2%減)、していることが明らかになった。 ・2)立地動向の推移データにおいて、2011年と2018年との目視による比較により、事業所数の減少のみならず、各市町村の事業所の集積度が下がっている可能性が高いことを確認した(精度を高めるため、今後この集積度を定量的に把握する必要があるものと考える)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、主に研究目的Ⅰ.陶磁器産業地域の1980年代以降(衰退期)における陶磁器関連施設の空間変容と現況の立地状況の実態を明らかにするため、以下の作業を行った。 ◎作業Ⅰ 全国基礎調査による全体像の把握 : 経済産業省指定伝統工芸品に指定された陶磁器産業の国内産地(47市町村)の1)基礎情報(事業所数、常用従業者数、製品出荷額数、付加価値額等の推移(1986年~2018年)と、2)立地動向の推移データ(2011年~2018年)を、RESAS(地域経済分析システム)で公開されているデータを基に作成・分析した。これらの分析から、この約35年の間に相当な数の陶磁器関連の事業所が陶磁器産業産地から消失していること等を定量的に把握できた。 ◎作業Ⅱ 対象地域の空間特性把握 : 本研究のメインの対象地域である瀬戸焼・美濃焼産地(愛知県瀬戸市、岐阜県多治見市等)、伊万里・有田焼産地(佐賀県伊万里市、有田町)、備前焼産地(岡山県備前市)に対して、RESAS、住宅地図、電話帳、インターネットの窯元紹介等では把握しきれない空間変容及び現況の陶磁器関連施設の立地動向と、関連施設跡地の新しい利活用実態把握を目的に現地調査を行った。また瀬戸市に関しては、中心市街地での関連施設の消失実態・要因把握とその跡地の活用実績の定量的な詳細分析も行った。しかし新型コロナウイルスの影響のため2020年2月以降現況調査の実施を自粛しており、作業Ⅱに関しては当初の予定よりも遅れている状況にあるため、空間特性把握のためのデータがまだ充分には揃っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
研究目的Ⅰ.陶磁器産業地域の1980年代以降(衰退期)における陶磁器関連施設の空間変容と現況の立地状況の実態を明らかにするため、以下の作業を行う予定である。 ◎作業Ⅱ 対象地域の空間特性把握(令和2年度に実施)(担当:岡本、永野、臼井) : 新型コロナの影響のため昨年度実施できなかった対象地域の現地調査の調査を、状況が落ち着き次第再開する。また並行してRESAS、住宅地図、電話帳、インターネットの窯元紹介等から1980年以降の陶磁器関連施設のうち多くの割合を占める事業所立地の空間変容・現況の立地状況の実態を整理・把握する。 また研究目的Ⅱ.それぞれのタイプと地域事情(立地・コミュニティ特性等)に見合った関連施設群の新たな利活用方策を明らかにするために、以下の作業を行う予定である。 ◎作業Ⅲ 対象地域の利活用方策の実態把握および仮説提示と、仮説のポテンシャル調査(令和2・3年度に実施)(担当:岡本、永野、臼井) : 対象地域内の既存利活用方策を、各種資料の調達や各自治体等の担当課及び陶磁器系組合等へのインタビューにより実態・課題を把握する。またこれらから各変容タイプと現況立地タイプに見合った新しい利活用方策を仮説的に提示し、そのポテンシャルを把握するため地域内の陶磁器事業者やNPO組織等へ、空き空間への利用意向や協働型まちづくりへの参加意向、陶磁器産業を軸とした新しい産業創出のアイデア等を聞き出すインタビュー(あるいはアンケート)調査を実施する。 ◎作業Ⅳ 関連施設群の新たな利活用の方策の提案(担当:岡本)(令和3年度) : 各地域での作業Ⅱ、作業Ⅲの結果を比較検証しながら各地域の地域事情やコミュニティ特性等を炙り出し、各地域の空間特性(変容タイプ・現況立地タイプ)と地域事情等に見合った関連施設群の新たな利活用方策を提案・明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、対象地域の現地調査および分担者との研究打ち合わせを自粛したため、旅費を繰り越すこととなった。今年度新型コロナウィルスの影響がおさまり県外出張ができるような状況になれば、予定していた現地調査の旅費代にあてる予定である。
|
備考 |
「愛知住まい・まちづくりコンサルタント協議会勉強会+未来茶論(みらいカフェ)コラボ企画」において招待講演を行った(講演タイトル「空閑地・オープンスペースの新たな利活用方法を考える~愛知県内の実践事例を基に~」)(2020年2月21日、名古屋都市センターにおいて)
|