研究課題/領域番号 |
19K04762
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
佐々木 伸子 福山大学, 工学部, 准教授 (90259937)
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研究分担者 |
下倉 玲子 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (50510442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達障害 / 通常学級 / インクルーシブ / カームダウン / ASD / ADHD / 落ち着き空間 / 行動特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、インクルーシブ教育システムの一つとして発達障害のある児童が在籍する普通教室を対象に障害特性による問題を発生しにくくするための「教室の構造化」を検討することを目的としている。2年目の2020年度は、通常学級における発達障害児が抱える問題と支援ニーズの解明を目的として、発達障害のある子どもの親の会を対象として調査を行った。研究調査に協力が得られた発達障害の子どもを持つ親の会3団体と児童発達支援を行う多機能型事業所一箇所を調査対象とした。保護者によるアンケートより45人の子どもを分析対象とした。内、11人についてヒアリング調査でパニックやカームダウンの詳細な状況の聞き取りを行なった。 分析結果より、子どもの行動特性では、落ち着きがなくなる、パニックを起こすが多く、約半数に閉じこもったり、狭い場所に行きたがる行動があった。感覚特性については、半数以上に音や匂いに対する感覚過敏があり、特に音については建築的解決が求められる。家庭での落ち着き空間は、約半数が作っており、家庭では子どもの特性への配慮が行われていた。一方、学校では、障害に配慮した空間に乏しいことがうかがえ、一人になれる場所や落ち着ける場所への要望があった。学校での困りごとでは、コミュニケーションの問題が多く、暴力やパニックなどで教室から出るなどクールダウンの必要な状況があった。クールダウンの場所は通常学級では教室以外の空間が中心であり、特別支援学級では教室内のレイアウトでカームダウン空間が設えられていた。 今回の調査は事例数が少ないため一般化はできないが、発達障害の子どもの特性と落ち着き空間について知見を得ることができた。今後は教室内での不適応行動の具体的な解消方法について調査分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナ禍の影響で学校訪問調査が実施できなかった。海外で予定していたスウェーデンの調査ができず、国内調査でも訪問やヒアリング調査が困難であった。海外調査は翌年以降に持ち越した。国内は調査の方法を工夫し、親の会代表者へのzoomによるヒアリングやformsによるアンケートに変更をして予定していた内容を実施した。親の会の交流会が開催されないことや訪問や対面調査が難しかったことにより、調査対象数が増えないと言う問題があった。しかし、当該年度の目標であった保護者への調査は概ね実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度まではコロナ禍の影響はありつつも調査方法の工夫によって研究を遂行することができた。しかし、3年目の2021年度に予定していた国内のインクルーシブ先進校調査は新型コロナウィルス感染拡大の状況次第となる。調査対象校の協力を得て少しずつでも進める予定である。感染拡大の状況で訪問調査が困難な場合は、郵送調査やインターネットを利用した調査も検討する。2020年度実施予定のスウェーデン調査も見通しが立たないが2022年3月を調査実施候補として準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で予定していたスウェーデンの学校調査ができなかった。国内調査もインクルーシブ推進校の訪問調査ができなかったため、旅費の未使用が生じた。 次年度の計画では、新型コロナウィルスの感染拡大状況をみながら国内のインクルーシブ先進校の訪問調査を行う予定である。感染拡大の影響で訪問調査が困難な場合には、郵送やインターネット調査の検討を行うこととする。2022年3月には状況が落ち着いていればスウェーデン調査をする計画である。
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