本研究は、公共空間利用に求められる価値観「公共性」の概念を整理し、多面的観点から評価する方法を提案することを目的とした。 第一に、公共空間利用に公共性概念がどのように発現しているのかを実例をもとに分析した。まず公共空間の公共性の概念を文献調査に基づき①直接利用②間接利用③存在価値の面から仮説的に整理した。続いて、公共空間における官民連携事業であるPark-PFI事業を調査対象に、全国27事例の事業者選定の募集要項内に記述される公共性に関する文言の特徴や傾向を前述の観点に沿って分析した。その結果、公園の従来機能の維持や新しい公共に関する文言の割合は低く、賑わい創出に関する文言の割合が高いことが明らかとなり、集客や経済的活性化の効果をより求める傾向にあることが分かった。これにより、公共空間利用における「公平性」の一律原則から、公平性や効率性、寛容性等を包含する「公共性」の価値観へ移行しつつあることの現れである一方、公共空間が特定の事業で占用されることによって利用が制限されたり多様性の低下につながる懸念もあることを示した。 第二に、公共空間利用における「公共性」の評価方法を検討した。まず現在の評価方法を把握するためPark-PFI全国44事例を対象に、事業者選定審査の配点表での公共性への配慮や事業に求める条件の特徴をテキスト分析した。その結果、公園の立地や特性に拘らず、おおよそ一律の基準で事業者を審査している傾向にあることが分かった。官民連携で良質な空間やサービスを提供する上で、公園規模や立地条件等を考慮した事業条件とすることの重要性が日本公園緑地協会でも指摘されてきたが、その根拠を統計的に示した。これに加え、特定公園施設の整備・管理運営の費用負担や労務負担の官民の役割分担のパタンを公共性の概念との関係で整理し、公共空間利用と公共貢献の最適なオフセット関係を提案した。
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