今日、地方都市では、人口減少による過疎化や少子高齢化、地場産業の衰退などで地域社会を維持することが困難な状態になっている。また、地震の他に洪水や土石流など大規模な自然災害が多発している。これらの地域問題を解決するために地質遺産を活かして持続可能な地域社会をつくるジオパーク活動が世界各地で展開されている。 2023年度の研究では、子どもたちや観光客へ地震災害の体験や復興過程で得られた教訓を伝承するためにジオパークの観光地で震災遺構や博物館を活かす復興まちづくりのあり方について明らかにした。調査対象は熊本県8市町村から成る阿蘇地域を地理的領域とする阿蘇ユネスコ世界ジオパークと熊本地震震災ミュージアムで、2023年9月に関係者へ聴き取りを実施した。結論として、震災遺構や博物館を活かす復興まちづくりのあり方とは、①被災地で博物館活動を展開するために県が、熊本地震復興基金等を運用して震災ミュージアムの専任学芸員を雇用すること。県立博物館等から学芸員を出向させて震災ミュージアム職員へ技術支援しつつ、共同で震災遺物や復興に向けた住民活動の写真・動画の収集・保存、小中高生向けの減災教育副読本やビデオ教材の作成、巡回展を開催すること。②推進協議会は、大学・博物館関係者と協力して災害語り部の研修会を開講し、震災遺構や博物館で語れる教育プログラムを作ること。ジオガイド協会と協働で震災遺構や博物館と再建した阿蘇神社を巡る教育旅行ツアーを造成すべきと考える。 総括として、日本で56地域のジオパークを推進する運営組織に対するアンケート調査では、ユネスコ世界ジオパーク・日本ジオパークの特性を明らかにした。また、3地域(伊豆半島、阿蘇、伊豆大島)で実地調査を行い、火山災害・地震災害後の復興まちづくりとジオパーク活動との関係を捉え、災害遺構を保存・整備するプロセスと学校教育や教育旅行へ活かす方法を明らかにした。
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