前年度までは縮小均衡状態を打開して住民の主体性を引き出すツールとして開発した「先よみワークショップ」の有効性を確認できた。最終年度となる23年度は実質的な社会実装に向けた取り組みを進めた。具体的には地域状況の定量的把握と同時にW.S.を行うことで、集落の状況把握をより具体的に進めることを目指し、兵庫県とともに「自分ごと化ツール」として開発を進めた。集落への聞き取りを中心とした地域活動の定量的把握を行ったうえで地域住民を対象としたW.S.を行うことで、住民の主体性を上げつつより具体的な集落活動の把握をすることを目指している。具体的に兵庫県朝来市、および南あわじ市にて実証的検証も行っている。その結果、集落活動の定量的把握については、かなりきめ細やかなヒアリングを必要とするため、集落側の事前準備やヒアリング実施者の負担が有ることがわかった。 一方で、農村部などもともと地域コミュニティが一定程度の実行力を持っている地域ではこのような手法も有効と言えるが、市街地などコミュニティのテーマ型化が進みつつ有る地域では、担い手概念も薄いことが懸念されることもわかった。特にコミュニティの質的変化は農村部でも起こりつつ有ることから、テーマ型コミュティ化する社会での担い手像や合意形成のあり方を検討する必要性が明らかとなった。 なお、縮小均衡状態を打開して以降の検討で集落たたみをイメージしている地域における「転出子ネットワークによる地域サポート」の可能性を「関係人口」による実質的な地域管理活動として位置づける可能性も示すことができた。こうした成果は研究代表者による研究発表のみならず、対象地域が他研究者による研究対象ともなるなど、一定の価値を有する成果となったと言える。
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