本研究の目的は,地方における空き家利活用に対する主な関係者の意識と実態に空き家市場流通化の可能性を探ることで,空き家活用団体の転貸事業の成立要件に対して基礎的な知見を得ることである。 本年度は,長崎県の移住者向け住宅確保加速化支援事業に認定されたNPO法人五島空き家マッチング研究所(五島市),雲仙まちづくり株式会社(雲仙市),NPO法人アオノトビラ(南島原市)の3団体を対象に,業務内容に関してヒアリング及び現地調査を実施し,各団体の業務モデルの特徴と相違点を明らかにするとともに,中でも関与した空き家物件が最も多いNPO法人五島空き家マッチング研究所を対象に,転貸あるいは賃貸など団体が各物件に対する関わり方の違いによって,各物件への業務の関与の度合いが変化するのかを分析することで,地方における空き家活用団体による転貸事業の成立要件の手がかりを求めた。 前者に関して,ヒアリング等の結果,県が示す転貸事業の業務モデルに対して,各団体とも単に空き家活用団体といっても異なる業務モデルを示すことが明らかになった。このことは,地方の空き家活用団体が未だ試行錯誤段階であることを裏付ける一方,空き家活用団体の業務モデルの多様性を記録するものとして有益な情報を得たと考えている。 また,後者に関しては,各物件に対する業務の関わり方について,関与の度合いを物件に対する業務の段階に応じて12項目の評価項目を設定して分析を実施した。結果,転貸物件,賃貸物件など団体の関わり方の違いによって,団体の関与の度合いが異なること,転貸物件に至るまでには,団体として当該物件に投資できる状況であるか,団体が転貸として関与する必然性が見られるか,団体が空き家の所有者に対してイニシアティブを持って物件の利活用者(入居者)に関与できることが条件になっていることなどが明らかになった。
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