研究実績の概要 |
本研究の目的は以下である。(1)北海道に残された膨大な開拓関連資料の中に散在する殖民都市の「市街地区画図」を発掘し、CADを用いて精緻な復元図を作成し、データベース化する。(2)これをGIS上の現代の地図情報や多様なデータと重ね合わせ、自然環境に適応した環境共生型の都市設計手法を解明する。(3)これらで蓄積された多様な都市設計手法(山当て・景観軸など)が、現代の都市デザインにどのように活用されているかを検証し、類型化する。研究最終年度である令和3年度は、目的(2)(3)を実施した。 目的(2)については、前年度までの補充調査を実施して74都市を対象に復元図を作成し、環境共生型の都市設計手法を分析した。また、これに関連して、「市街地区画図を基にした市街地建設の実態と設計手法に関する考察-明治大正期に建設された北海道の東川・南富良野市街地を事例として-,日本建築学会技術報告集第67号,2021年,pp1428-1433」を発表した。2つの市街地を対象に現在に伝わる「市街地区画図」と現在の地積図を比較考察し、区画図での計画寸法が高いレベルで忠実に建設されている実態を明らかにし、また、同一市街地の当初案と修正案を比較することで市街地における道路と街区の割り付け方について考察した。 目的(3)に対しては、データベース化した74都市の中から明確な都市軸を形成している都市を対象に、建設時の都市設計手法が現代の都市デザインにどのように活用されているかを検証した。例えば、日高町では、本来的な殖民地区画道路の位置から外れた斜行道路沿いに市街地が形成された。隣接して本来の区画道路があるが、その途中にある河岸段丘の崖地を回避している。その向きを検討する段階で近傍の山頂を目印にしており、斜行道路の正面には近傍の山頂が眺望できる。現在では、都市軸であると同時に景観軸を構成している。
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