研究課題/領域番号 |
19K04773
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
大沼 正寛 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (40316451)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ルーラルワークプレイス / 生業空間 / 生業景 / 地技 / 近現代史 / 農山漁村 / 東北地方 |
研究実績の概要 |
地域の環境・資源を活かし、価値を生み出す技術・技能を「地技」と定義し、地技をもとにした生業(=地技型生業)の場をルーラルワークプレイスとして、これにかかわる近現代史を事例的に明らかにすることを目的に調査を進めてきた。また、選定したルーラルワークプレイスの事例は、いずれもこれからの持続可能な地域産業への示唆を含んでいる可能性があることから、それらの活用保全にはどのような課題があるのかを複眼的に考察してきた。 具体的な事例としては、宮城県内外を中心に、稲作複合型農家、蚕種製造所、炭焼き職人、和紙職人の家、染織家工房、小漁師の家、スレート職人工房、鍛冶職人の家、鉄加工工場、醸造蔵改修工芸ギャラリーなど10件の調査を進めてきた。現場の環境、建物等資産の多様性から、調査の詳細度合いは必ずしも統一的ではない面があるものの、それらがどのように形成され、時代背景にはどのような事柄が挙げられるか、といった複眼的考察の基盤となる情報を収集することができた。 全体を通して、地技型生業の近現代史は動態的といえる。近世からの土地や資産を基盤とし、代を重ねてきたものだけを歴史的、伝統的、と捉えることは適切でないと考えられる。農山漁村とも、農地形態や農法が変わる、漁法や職種が変わる、山林環境が変わる、社会のニーズが変わる、度々災害があるといったなかで、変容/不変の混在からなる現状のワークプレイスが形成されてきた。なかには新規就業のかたちで地技型生業を継承・再構築している事例もあり、こうした多様な様相は、通常都市部においていわれているワークプレイス論とは異なるものと考えられる。なお、個々のワークプレイスにおける課題解決への試行錯誤は、地域産業と持続可能性に対する示唆を有している可能性もある。これらについて考察することも副次的な目的と位置づけ、研究をまとめていく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に示した内容をこれまで進め、大部分を終えることはできたが、全体として、根幹内容となる調査そのものの完遂を行ううえで、2019, 2020, 2021年度を通してコロナ禍によるフィールドワークの遅延が続いた。このため、調査成果を整理し、不足情報等を補い、論理化するといった総括過程に至るステップが、当初年度内には間に合わないと判断し、研究期間延長申請を行った。このため、やや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
主要な調査はほぼ終えていることから、基本的にはとりまとめを行うことを主体とする。 研究期間延長をさせて頂けた好機を活かし、総括と併行して学術論文等の作成、研究成果報告の試作、改めての関連研究の参照などを進めながら、これまでの調査研究内容の検証を行い、必要に応じて補足調査等を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によるフィールド調査の自粛・遅延が蓄積し、とりまとめに十分な時間が得られなかったことから延長を申請し、認めて頂いた。次年度は、補足調査やデータ整理(アルバイト謝金)などに次年度使用額を充て、研究を完遂させたいと考えている。
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備考 |
JST-RISTEX(2016-19) 「農山漁村共同アトリエ群による産業の再構築と多彩な生活景の醸成(研究代表者=大沼正寛)」を契機に、所属大学内のプロジェクト研究所として設置したものが「生業景デザイン研究所」であり、上記はそのホームページである。ルーラルワークプレイス研究の契機となった。
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