研究実績の概要 |
働きがいと経済成長、陸や海の豊かさを守る、といった持続可能性を考える具体的事象であるルーラルワークプレイス(農山漁村の生業場)に着目し、その近現代史と活用保全の要件を明らかにすべく事例研究を行った。対象事例が現在までどのように存続し、時代変容のなかでどう対応しようとしているのか、ヒアリングと空間実測調査を行いながら考察を重ねた。事例選定にあたっては、当初は東北地方10事例に国内外の比較対象を加える予定であったが、コロナ禍をふまえ、遠隔ではなく宮城県内を中心に東北地方から20事例を対象とすることとし、うち10件については空間調査を併行した。ここで、地場にねざした生業の土着性に鑑みた再編産業分類を考案し(1-エネルギー鉱業, 2-素材産業, 3-漁業採集, 4-農業, 5-養育畜産, 6-食品加工, 7-輸送交通, 8-建築造園土木, 9-各種工業, 10-三次・新規産業)、これらに関わる生業場の変容過程や特徴・課題を複眼的に考察した。 現在まで存続してきた多様な生業の近現代史を総括すると、それらは生産手段や輸送・交通等の近代化を利用して発展してきた面も少なくない。先祖伝来の土地を継承するために複合資本・複合業態を展開する、生業そのものの継承進化を求めて立地を再考する、さらにその間に災害復興が関わってくる、といった側面を併有した事例が多いが、こうした生業・活動をはぐくむルーラルワークプレイスは、いずれも従前の環境・資源・技術を尊重しながらのプロセスであることから、それまでの特徴を遺したSuccessive(継承的)な点を持つ一方、時代変容のなかで新たな価値創出に挑むCreative(創造的)な点を併有していることも分かった。他方、総じてこれまでの人口増加基調が激変する今後は、Collaborative(共創的)な点が求められると思われ、そのような各地域の胎動も散見された。
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