研究実績の概要 |
本研究は、妊娠出産期から子育て期に渡る切れ目のない支援の構築を建築計画の視点から検討するため、子育て世代包括支援センターを対象として、その建築計画指針を策定することを目的とする。なお、国は、今後、子育て世代包括支援センターと子ども家庭総合支援拠点を再編して、こども家庭センターの設置に努めるという方針を示している。このような状況において、子育て世代包括支援センターの実態と課題を明らかにすることは喫緊の課題である。 調査は、2021年に全国1,288市区町村の子育て世代包括支援センター2,052施設を対象としたアンケートを実施した。回収数は、郵送492件とウェブ119件、計611件、回収率は29.8%である。今年度は、上記の全国アンケート調査に基づき、利用、運営、施設整備の実態を把握したうえで、市役所、保健センター、児童館といった実施場所別の特徴を分析した論文を建築学会に投稿し、採用された【査読論文参照】。結果の概要を以下にまとめる。利用者の属性は妊婦のみが利用する事例から妊婦が全く利用しない事例まで多様である。スタッフの職種は保健師が半数近くを占め、助産師は5%にとどまる。利用人数に影響を与える要因は、保育士の人数、室の広さの合計、スタッフ人数、新築が上位に位置づけられる等を明らかにした。 さらに、子育て世代包括支援センターの建築計画指針として、全体計画、環境・設備計画、各室計画、その他の4つのカテゴリーと18のサブカテゴリーを提示した。サブカテゴリーは、アクセスしやすさ、プライバシーの確保、換気・照明・音響等、子ども用トイレ、半屋外空間の重要性等を指摘したうえで、結論として、相談室、プレイルーム、授乳室は乳児とその家族を支援する空間として重要と位置づけられ、一時保育室等は機能を拡張する可能性をもつこと等を明らかにした【国際学会発表参照】。
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