研究課題/領域番号 |
19K04779
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
斉藤 圭 東京都市大学, 都市生活学部, 准教授 (40805941)
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研究分担者 |
篠崎 道彦 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (60241014)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域緑化計画 / 歴史景観都市 / 土着造園技術 / 伝統的生態学的知識 / 都市熱環境 |
研究実績の概要 |
本研究は,蒸暑気候の東南アジアにおいて涼を得るために経験的に伝わる造園手法に着目し,熱環境への冷却効果についての定量的な再評価を通じた熱環境緩和手法の開発と,地域緑化計画への適用可能性についての評価を目的としている。 2年目である令和二年度は,当初の研究計画及び昨年度微修正した計画に従い以下の作業を行った。 (1)初年度からの継続作業として,蒸暑気候下の伝統的な造園技術・手法につい文献・既往研究等の収集・レビューを行った。また,屋外熱環境に関する先行研究レビューのアップデートを並行して行った。研究対象とする市街地エリア内における地域緑化計画に参照可能な先行研究や分野関連文献は数が非常に限られている。その為,本文献調査は他作業と並行しながら引き続き行っていく。 (2)初年度に行った現地フィールド調査で得られた郊外型住宅地および歴史エリアにおける建物画像や屋外における熱的静止画・動画を参照しながら,現地環境下での植栽に関する代表的な樹種,サイズ,レイアウトについてその特徴をまとめた。これらを踏まえ,初年度よりGISをプラットフォームとして整備してきた空間データベース(市街地の建物・街区・道路・土地被覆など)に植栽データベースとして追加することでモデルデータの質的・量的なアップデートを行った。 (3)整備してきた空間データをベースとし,新・旧市街地内の現況微気候環境についての予測を行い,建物サイズ・道路幅員・街路樹状況等による熱的快適性の特徴を面的に捉えた。また市街地全体を4つの詳細エリアに区分した上で数値シミュレーションを実行し,それぞれの周辺環境に応じた特徴を踏まえた緑化とそれによる効果について比較・検証を行った。 ここまでの結果については査読付き国際ジャーナルへの投稿1件を行った(本報告時点で査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2年目の令和二年度に計画していた3つの実作業のうち,実績概要で述べた(1)歴史景観地区の空間データを解析作業を通じて,域内のGI適用可能箇所を抽出・代表的な敷地の複数選択についての目途は立ちつつある。また初年度からの作業の積み残しである(2)回遊動線把握および景観分析については,当初予定の分析方法から変更を考えているため作業環境の整備が遅れている。予定していた(3)2回目の海外渡航・現地調査(造園に関する在来知調査)がCOVID-19の影響により国内外の状況が整わず未実行となっている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目である令和三年度は,COVID-19による影響の長期化を想定しながら以下のスケジュール及び研究推進方針で進めていきたい。ひとつは積み残しとなっている「歴史的街並み・景観分析」について,分析環境を早急に整備し,これまで構築してきた空間データを活用しながら年度の早い段階で進めていくことにする。これらは域内のスムーズな回遊行動および歩行者の誘導に繋がる部分である。また,2年目の令和二年度内に計画していたマレーシア国内における2回目の現地調査については,現地状況等を見極めながら渡航可能期間を設定することとし,オンライン調査の可能性についても引き続き検討を行う。現地調査の結果を踏まえて進めるべき部分については,対応可能な部分について計画通り作業を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年度目の令和二年度に,研究分担者を含めた2回目の海外渡航・現地調査を予定していたが,COVID-19の影響により未実施となったため。同現地調査内で使用予定であった文献収集予算とも併せて未使用となっている。これ以外については前年度同様に,シミュレーション環境構築に関する研究分担者経費,および,調査・データ整備等の研究協力者への謝金,空間データ整備に関するGISライセンス費用,現有PC設備の増強等に予算を用いる計画である。
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