研究課題/領域番号 |
19K04780
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
加藤 悠介 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80455138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 福祉住居 / 居住環境指標 / 車いす使用者 / 高齢者 / 分散型高齢者住宅 |
研究実績の概要 |
本研究は、ケアと分離した住居を提供するハウジングファーストの視点にもとづき、高齢者や障害者のための福祉住居における住まい方を調査し、地域で生活を営む住居に必要な要件を整理することで、ケアや社会資源と住居の関係性を見直し、地域共生社会の構築に寄与する福祉住居の評価システムを開発へとつなげることを目的としている。 2020年度は、(1)評価システム開発へ向けた車いす使用者が暮らしやすい住居と地域に関する居住環境指標の試作、(2)団地の空き室を活用した分散型高齢者住宅の入居者を対象とした生活実態および満足度調査の2つを実施した。 (1)では、認知症ケアにおける「パーソンセンタードケア」の理論にもとづいたニーズの捉え方を援用し、車いす使用者の福祉住居の要件を整理する指標を試作した。具体的には、文献調査および生活実態調査のデータにもとづき、「くつろぎ」「同一性」「愛着」「主体的活動」「社会的一体性」の5つの項目に沿って指標を作成した。そして、車いす使用者へのアンケート調査を実施し、それぞれの指標の有効性を検討した。その結果、くつろぎ・同一性・愛着・主体的活動は指標が有効であると言えるが、社会的一体性は様々な環境的要因の集合であると考えられ、有効性が確認できず、新たな指標項目を検討する必要があることがわかった。 (2)では、名古屋市にある建物内に地域に開かれた活動拠点を有する分散型高齢者住宅の入居者70名へのアンケート調査を実施した。総合的な生活の満足度には、自宅での居心地よさが最も影響を与え、次いで地域の一員と感じること、近隣コミュニティの良好さが影響を与えていた。このことから、分散型の形態に活動拠点が加わることで、生活の中心的な場所が安定し、そのことが近隣での交流促進にも肯定的な影響を与えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高齢者、障害者、社会的養護が必要な子どもなど幅広い属性を対象とし、それぞれの状況や課題を整理することで、地域居住に必要な前提要件と居住者の属性に応じた個別要件を導き出すことを目的としている。2020年度は(1)海外視察の実施、(2)障害者に関する調査を行う予定であった。また、2019年度に遂行できなかった(3)高齢者に関する調査がある。 (1)については新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないことから実施を見送った。(2)については2019年度に実施済みの調査結果を踏まえた評価システムの開発を進めることができた。(3)については2020年度にアンケート調査を実施することができた。 以上のことから、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を受けて、今後は研究活動を以下のように進める予定である。 2021年度は、里親家庭やファミリーホームと呼ばれる子どもの養育を行う住居形態を対象とした調査を実施する。加えて、これまでの調査の実施と分析の過程で、新たな課題として浮かんできた生活困窮者や刑余者などに対する居住支援についても調査を実施する。これは、より幅広く広義な視点から福祉住居のあり方について検討するためである。なお、今後の新型コロナウイルス感染状況も踏まえると、海外視察は当面実施が難しいと思われ、2021年度は文献調査や国内の先進的な事例視察を実施する。 2022年度は最終年度となるため、それぞれの属性に対する調査の結果を横断して分析し、福祉居住の計画指針と評価システムについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルスの感染拡大のため、当初予定していた海外視察と国内の事例調査が実施できなかったこと、大学規定によりデータ集計作業を大学研究室でしか行うことができず、そのため協力者を募ることができずに謝金として使用することができなかったためである。 次年度は、感染状況を見極めた上で国内の事例調査を実施することでの旅費支出、これまでの調査データを整理するためのデータ集計作業への謝金支出により助成金を使用する計画である。
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