本研究は、ケアと分離した住居を提供するハウジングファーストの視点にもとづき、高齢者や障害者、子どものための福祉住居における住まい方を調査し、地域で生活を営む住居に必要な要件を整理することで、ケアや社会資源と住居の関係性を見直し、地域共生社会の構築に寄与する福祉住居の評価システムを開発へとつなげることを目的としている。 2022年度は、(1)集合住宅団地に暮らす住民を対象とした地域で選択する場所に関する調査、(2)要保護児童が暮らすファミリーホームを対象としたコミュニティとの関係性に関する調査を実施した。 (1)では、高齢者の地域に分散する場所の選択傾向とそのネットワーク分析からコミュニケーションの拠点となっている場所を明らかにすることを目的に、高齢化が進む大曽根住宅に暮らす住民17名へのインタビュー調査を実施した。その結果、個人で選択する場所は、好きな生活スタイルを実現しやすい場所がネットワークの中心となりやすいこと、コミュニケーションが発生する場所は、カフェなどの関係性を深められる場所と、資源回収サービスなどちょっとした立ち話ができることで顔見知りの範囲が広がる場所が近接してあることで、場所の拠点性が高まっていることが明らかとなった。 (2)では、社会的養護の分野において、福祉住居とコミュニティとの関係構築のプロセスを明らかにすることを目的に、ファミリーホーム7箇所の養育者へインタビュー調査を実施した。その結果、近隣住民に養育が必要な子どもが暮らす福祉住居であることを積極的に知らせるファミリーホームでは、隣近所や町内会、PTAとの信頼関係をベースにファミリーホームが子育て相談の場になるなど良好なコミュニティを形成するとともに、ファミリーホームが近隣にある地域施設や行政サービスのあり方にも影響を及ぼしており、コミュニティとの相互的な関係を築いていることが明らかとなった。
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