研究課題/領域番号 |
19K04781
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
加嶋 章博 摂南大学, 理工学部, 教授 (80390144)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スペイン / 植民都市計画 / インディアス総合文書館 / 都市計画技術 / 都市計画教育 / 多様性創出 / 機能分散 / 都市の拡張性 |
研究実績の概要 |
まず、スペイン植民地の都市計画がどのような専門的知見から整備されたのかについて考察を進めた。スペイン国内では、近世以降、建築教育や軍事技術教育などを行った王立のアカデミーにおいても、都市計画技術の教育を行ったことが把握出来てきた。 また、前年度に引き続き、今年度は、スペイン・インディアス総合文書館のチリ・セクション、ペルー・セクション所蔵の史料から、「都市計画図カルテ作成」及び「都市計画技術」のデータベース化を進めた。法規範等のテクスト史料と都市計画図等のイメージ史料の両側面から都市計画技術と見なされる事象を抽出し、諸情報を加えてカルテ化を進め、データベースの充実化を図った。 2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、インディアス総合文書館での現地調査が実現しなかったため、本研究の初動調査で入手した資料や既往研究による文献等から分析対象となり得る資料を特定し、作業を進めた。 都市計画技術においては、(1)道路・街区の配列など都市レイアウトに係る特性、(2)施設配置計画や主要広場・小広場の計画などに着目した都市施設配置計画、(3)地理的要因、方位など立地要件への対応、(4)都市と人口の関係、(5)土地利用や土地区分の特徴等に着目した。 都市図の製作者や技師が判明する場合は、技師の経歴等を調査し、計画技術に関する知見をどのように培ったか、教育をどこで受けたかについても調査を進めた。 あわせて、研究成果をホームページで公開するための編集作業も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インディアス総合文書館所蔵のスペイン植民地時代の都市建設に関する史料分析から、「都市計画技術」を同定する作業を継続した。この作業は、同文書館のセクションごとに進めているが、2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、予定していた現地のインディアス総合文書館での調査が実施できなかった。そのため、これまでに入手していた史料や文献から分析対象となり得る資料を特定し、都市計画技術に関する知見の記述について、一部考察作業を進めた。そして、道路・広場のカテゴリー化、小広場など都市施設の分散配置による「多様性創出」や「機能分散」、成長を見越した「都市の拡張性」という視点から、都市計画技術と見なせる事象の有無を考察した。 本研究では、こうしたスペイン植民地の都市計画規範がどのような専門的知見から整備されたのかについても考察を進めている。例えば、スペイン国内では、近世以降、建築教育や軍事技術教育などを行ったアカデミーにおいても、都市計画技術の教育を行ったことが把握出来てきた。例えば、王立バルセロナ軍事数学アカデミーReal Academia Militar de Matematicas en Barcelona(1700~1803年)は、軍事技師や建築家の教育機関であったが、アカデミー出身者は、城塞建設や植民都市計画などの国家的プロジェクトに数多く携わっている。そこで必要とされた知見は、軍事教育や数学的知見から、合理的にプランニングを行う技術でもあったことが少しずつ見えてきた。今年度までに考察した内容については、下記に考察をまとめて報告した。 ・加嶋章博「18 世紀バルセロナ・アカデミーにおける建築技師教育と都市計画の知見」、日本建築学会大会学術講演梗概集、2020年9月、pp,363-364.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により現地渡航による調査を断念したため、やや遅れた作業を取り戻す。スペイン植民地時代の「都市計画技術」を説明するため、都市計画図などのイメージ史料、計画技術を裏付ける指示や法規範等のテキスト史料の分析を進める。渡航制限が継続した場合は、すでに入手している史料やデジタルアーカイブなどから、分析対象となり得る資料を抽出する。インディアス総合文書館のチリ・セクション、ベネズエラ・セクションなどにおいて、都市計画技術を同定する作業を進め、エビデンスの蓄積を進める。都市図のみならず、地域地図等のイメージ史料や、法規範以外の記録文書などを含むテキスト史料も含めて、都市計画技術とみなせる要素は抽出・考察の対象に含めていく。 また、「多様性創出」「機能分散」「都市の拡張性」を踏まえた都市計画技術の特徴を整理していく。得られた知見を国内外の学会論文にまとめ、HP等でも公表する。 都市図の製作や都市計画に携わった技師や建築家がどのような都市計画技術の教育を受けたのかについても、さらに調査を進めていく。都市図作成や計画を行った技師の経歴や業績、本国での都市計画への貢献など、関連する情報を合わせて、都市計画の概念変遷と都市計画技術の確立に関するエビデンスを増強していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、スペイン渡航が実現しなかった。そのため、予定していた史料の分析が一部出来なくなった。関連して、研究成果公表のためのホームページ構築が延期された。渡航費やホームページ整備費に影響が出たが、時期をずらし、次年度の渡航費用ならびにホームページ構築費用、アーカイブからの資料申請費用、研究備品費に充当する予定である。
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