スペイン植民統治期の都市計画に関連する一次史料をもとに、当時の都市計画技術の読み取り作業を更新した。これまで選定してきた都市の位置や空間構成に関する情報を含む地図や都市図(イメージ史料)を対象に、都市レイアウト、都市施設の配置計画、立地要件などの具体的な計画意図の抽出とその特性について考察し、プランニングの姿勢を検討した。あわせて、勅令や訓令など(テキスト史料)から読み取れる都市のプランニングに対する方針を比較した。テキスト史料が示す制度や都市の理想的計画像が、イメージ史料が物語るプランニングに完全に一致することはないが、テキスト史料から読み取れる都市計画における多様性の創出、機能分散、都市拡張を前提とした計画性を、都市図等のイメージ史料において確認出来る事例があることを把握した。 最終年度は、分析の対象とした一次史料のデータベースをHP上で公開する準備を整えた。HP構築システムにより地域別や年代別に都市図を抽出するなど、イメージ史料を様々な視点から比較できるような編集とした。その結果、イメージ史料とイメージ史料、イメージ史料とテキスト史料の比較に見て取れる共通性や差異が把握し易くなった。 一方、考察過程におけるイメージとテキストが指し示す内容を相互に関係づける作業は恣意的な判断を含む点にも注意が必要である。この点について、プランニングという行為から導かれる形(イメージ)と言葉(テキスト)による解説の符合について、テキストからイメージを導出する場合と、イメージからテキストを導出する場合の違いや、両者の帰結の妥当性について、演習モデルを介して検討を試みている。 また、都市の多様性創出や機能分散という視点に見られる広場の配置論は、都市空間資源の創出にも通じる視点である。こうした視点については、都市計画の歴史的背景が大きく異なる日本の歴史的な景観や都市整備に当てはめた考察も行った。
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