研究実績の概要 |
本研究は,高度成長期に開発された郊外戸建て住宅地の次世代への継承に向けて,脱ベッドタウンのためのクリエイティブコミュニティの創出に関するポテンシャルを探ることを目的としている。特に,空き空間(空き家・空き店舗・空き地)を,郊外における新たなモノ・コトづくりの拠点とすることにより,担い手の発掘と支援を行うアクションリサーチを実施する。国内外の先進事例に関するフィールドワークと合わせて得られた分析結果を整理検討することで,郊外型のエリアマネジメント手法の構築に向けた知見を得るものである。 2023年度には,コロナのため延期していた,海外の先進事例の視察を行った。パリの15分都市,アムステルダム市郊外の自転車ネットワークと居場所としてのみちの活用等をフィールドワークを通して,郊外部におけるウォーカブルコミュニティの可能性と,その際の暮らしの中でのクリエイティビティの発揮のあり方を考察した。 国内では,2つの郊外住宅地における空き空間を活用したクリエイティブコミュニティ創出のアクションリサーチを実施した。福岡県日の里ニュータウンでは,UR空き住棟を再生した「ひのさと48」での活動と調査をとおして,担い手の発掘と新たな活動創出の手法を検討した。大分市敷戸団地では,空き店舗を活用した「しきどベース」を運営した。特にHIP-HOPとデスクトップミュージックを活動の軸とする「Shikido_Play_Ground.」を学生等と組織し,レコードプレイヤー等を用いて多世代の音楽趣味の居住者と関わるとともに,プロのDJ,ラッパー等と共同で地域のコンテクストを表現したラップ曲を公開するなど,郊外における文化発信拠点のあり方を検討した。 以上の活動から,郊外における暮らしの中のクリエイティビティのあり方と,それが地域の次世代継承につながるシナリオについて,最後に考察を行った。
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