自転車と歩行者の事故が減少しないことなどの背景から、近年、国の方針が変わり、自転車を歩行者から切り離す「自転車レーン」「(矢羽根による)車道混在」などの整備が進められている。しかしながら、自転車の走行環境に関する研究は十分とは言えず、走行環境のデザインの在り方が確立できているとは言い難い。そこで、各種の道路タイプにおける、自転車の走行行動と道路のデザイン上の課題を明らかにすること目的に、ビデオカメラを用いたフィールド観察調査と被験者を用いた走行実験を行った。 本年度(R5年度)は、「C.被験者によるフィールド走行実験」の追加実験とその分析を行った。まず、追加実験は、被験者6名で延べ96条件を行い、昨年度の実施分と合わせて、距離にして約570km分の走行データを取得した。また、分析については、アクションカメラで撮影した動画と走行中に書いてもらった記録シートをもとに、自転車の走行位置や、回避・交錯の発生実態、その相手、その時の回避行動や原因行動を読み取り、自転車道・自転車レーン・車道混在などの道路タイプ別の課題点を分析した。 その結果、以下の成果を得た。「自歩道(構造的分離)」を除く6つの道路タイプのうち、「自歩道(共用)」と「自転車道」では、被験者全員が指定された走行位置を走行しており、この2つの道路タイプは誰にとっても走行しやすいことが分かった。しかし、その一方で残りの4つの道路タイプは被験者により走行位置が大きく異なり、クラスター分析をしたところ、被験者は3つのタイプに分かれ、そのうちの1つのクラスターは、国が進めている「自転車レーン」や「(矢羽根による)車道混在」の走行に強い不安を感じていることが明らかとなった。
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