研究課題/領域番号 |
19K04798
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
山口 勝己 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (30200611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小学校施設 / 中学校施設 / 多目的スペース / オープンスペース / 教科教室制 / 教科教室型校舎 |
研究実績の概要 |
1.小学校OSの利用状況と評価についての調査:多目的スペースをもつM市の4校(OS有3校、多目的教室有1校)の小学校を対象に、多目的スペースの利用状況と評価に関する教員アンケート調査を行った。3校のOSの教室との境界のつくりは、完全オープン、天井吊りの可動間仕切り、引き戸である。主な結果は、①教室とOSの境界で最も望ましいとされているのは可動間仕切りであるが、引き戸有りの小学校の教員は引き戸を高評価しており、利用状況や境界の評価を踏まえると教室とOSの境界については引き戸が望ましいこと、②OSを適切に評価するには実際にOSを利用した経験が重要であり、経験がないと適切に評価するのは難しいこと、である。 2.教科教室型中学校施設における利用状況と課題:教科教室型校舎を有する中学校に対して利用状況と評価に関する教員アンケート調査を実施した。また、建設後2年時の調査との比較を行った。主な結果は、①教科教室制の肯定的評価は教員の半数を超え、当初に比べ安定した教科教室制の運営が行われていたが、学年や学級活動を重視した取り組みによるためと考えられること、②教科教室制の運営には、学級運営がしやすく学年のまとまりを作りやすいHBのつくり・配置や学年スペースの設置、教科以外の教師間の情報交換がしやすい全体職員室の設置が重要であること、である。 3.学校施設整備方針・長寿命化計画の策定状況:自治体における整備方針や長寿命化計画に関する資料を収集し、策定状況や内容について分析した。主な結果は、①整備方針は自治体により構成や内容の細かさに違いがあるが、長寿命化計画には標準化の傾向がみられること、②整備方針は教育的な観点から整備環境を実現するための改築や改修に焦点が置かれているのに対して、長寿命化計画は施設性能の観点から維持管理や建設コスト平準化等を目的とするという性格の違いが確認できたこと、である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アクティブ・ラーニングを実践している小中学校を訪問し、授業などの教育活動について観察調査を行うとともに教員に対するヒアリング調査を行う予定にしていたが、コロナ禍のため学校を訪問することができなかった。近郊にあるオープンスペースを有する小学校及び教科教室型校舎の中学校の教員に対するアンケート調査を行うことはできたが、アクティブ・ラーニング実践例を調査することは不可能であった。また、小学校、中学校の雑誌掲載事例の分析を行ったが、アクティブラーニングの取組状況まで把握することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染がある程度収束し、調査が可能になった場合には昨年度予定していた以下の調査を実施する。アクティブ・ラーニングを積極的に導入している小学校、中学校に対して、アクティブ・ラーニングを行う上での空間面・設備面の問題点や要望に関するアンケート調査を行い、アクティブ・ラーニングに対応した教科教室やメディアスペースの面積、形状、教育機器などの設備についての条件を把握するとともに、アクティブ・ラーニングを推進するための学校運営の工夫などについて検討する。さらに、アクティブ・ラーニングを導入した授業を観察し、空間的、時系列的に詳細に記録することによって、授業展開、机配置の変化、ICT機器の利用などについて把握し、アクティブ・ラーニングに必要とされる面積や空間構成、設備について検討する。また、アクティブ・ラーニング用の教室を整備する学校も出現しており、このような事例を収集するとともに、授業での使われ方について調査を行い、有効性と課題について明らかにする。 コロナ禍の影響により学校に対する調査が実施できない場合は、以下のように資料収集によって研究を進める予定にしている。 ①各自治体が策定している小学校、中学校の施設整備方針、長寿命化計画を収集し、その内容を分析することにより、教室や多目的スペース整備の今後の動向を明らかにすることにより、アクティブ・ラーニングを支援するスペースの計画について考察する。 ②教育分野の文献・資料より、小学校、中学校におけるアクティブ・ラーニングの実践校の報告資料を収集し、その中から教育方法・学習展開と必要とされるスペース、設備との関係について抽出し分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナウィルスが広まったため予定していた学校訪問調査を実施することができなかった。また、コロナ禍の中で十分に研究時間を取ることができず、アクティブ・ラーニング関連の資料収集についても十分に進めることができなかった。消耗品についても、昨年度購入したものを使用してまかなえたために新たに購入することが必要ではなかった。以上の理由により、次年度利用が生じた。 (使用計画) ①アクティブ・ラーニング実践校に対する調査:コロナ禍がある程度収束することが条件となるが、2019年度と同様に積極的にアクティブ・ラーニングを授業に導入している学校を選定し、授業観察調査、教員アンケート調査を行う。そのための旅費及び同行する調査協力者に対する謝金が必要となる。 ②教育学分野の関連資料の収集・分析:教育学分野におけるアクティブ・ラーニングに関する資料を収集し、概念を整理するとともに教育方法について分析し、学習環境に求められている条件を明らかにする。文献・資料収集のための費用が必要となる。
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