研究課題/領域番号 |
19K04801
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
大島 秀明 福山大学, 工学部, 教授 (10412313)
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研究分担者 |
酒井 要 福山大学, 工学部, 助教 (10235103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複合図書館 / 滞在型利用 / 地域拠点 / 複合施設 |
研究実績の概要 |
公共図書館は、スペースや設備の集約化、敷地の効率的利用、コスト削減、複合施設の相乗効果等により、近年複合図書館の事例が増えている。さらに、公共図書館は、地域拠点としての社会的役割も担える可能性があり、複合図書館の滞在型利用についての研究が必要である。本調査は、複合図書館を都市的空間として捉え、来館者の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用の3つの視点から、複合図書館固有の計画的条件や地域拠点としての可能性を見出すことを目的としている。そのために当研究の今年度の実績は、全国の公共図書館の設置状況と複合化の実態調査として、約2500施設に対して郵送調査と集計及び分析を行った。郵送調査項目は、1)複合化に関する調査項目として、複合化の形式、複合化のメリット、複合化のデメリット、施設内の他の施設との連携、施設内の他の施設との連携内容である。2)滞在型利用の調査項目として、滞在型利用への対応、滞在型利用の基本方針、現在の滞在型の具体的対応、椅子利用状況である。3)地域拠点施設関係調査項目として、近隣の施設との連携、近隣施設の中で連携、近隣の施設との連携的内容、図書館による近隣の施設への影響、近隣の施設による図書館への影響である。また、各施設の開設年、延面積等の建物概要、収容冊数等の施設データ、立地条件の種別等を、出版物等の出版物等データを参照し、複合化の最新の状況を調査した。調査方法は、郵送調査として当初、郵便による回答を予定したが、WEBアンケート調査に変更し、660以上(回収率26%)のサンプル数を得た。これらのデータをもとに滞在型利用の基本方針の有無と複合化の有無による施設整備等との関係について分析を行い、公共図書館の滞在型利用の基本方針と複合化による施設整備に対する明確な影響を明らかにし、その成果を2020年度の学会大会にて発表(2編)の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
郵送調査として当初、アンケート結果の回収方法については、返信封筒を同封した郵便による回収方法を予定し、その準備を行い進めていた。全国の2500程度の図書館を対象として、近年の他の調査事例等を参照した結果、回収率の低さが想定され、その後、WEBアンケート調査に変更した。調査は、全国全ての公共図書館に対してアンケートの依頼は郵送で行い、アンケートの回答はWEBアンケート調査で行った。WEBアンケートは、スムーズにアンケートフォームへアクセスできるように、郵送によるアンケートの依頼文に、QRコードを記載し、それを読み取って回答するという方法で行った、しかし、図書館によっては、QRコードに対応していない図書館も多く、その後多くの図書館から問い合わせがあった。検討した結果、その場合は紙媒体によるアンケートを行うことを依頼し、それらのデータを加えて分析を行った。当初の計画では、「複合図書館と単独図書館の座りスペース利用を含めた利用特性比較分析」の施設調査対象を郵送調査によるデータ分析によって抽出して選定する計画であったが、時期が11月以降となり、時期的に調査が難しいと判断し、今年度の施設調査を次年度に行うこととした。アンケートの回収については、各施設からの多くの問い合わせがあり回答の終了時期を令和2年1月末としたが、その後も多くの図書館側から回答期間延長の要請もあり、回答終了日を2月10日とし、最終的に約660施設のデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査分析によって滞在型利用と複合化による図書館整備内容への影響が明らかになったことを踏まえ、次年度は、複合図書館の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用との関係、空間的特性による影響に関する次の調査分析を行う。推進方策として、次年度を前半と後半にわけ、次の1)と2)の一部を人的補助を加えながら同時並行的に行う。 1)次年度の前半は、複合図書館の滞在型利用と規模、複合形式との関係を解明するための調査分析を行う。調査方法は、現在の事情により来館者アンケート調査に変わる以下の変更を計画している。今年度調査のデータと図書館年鑑のデータを加えて分析し、滞在型利用の基本方針の有無と複合形式による類型化を行う。規模の分類として、小規模、中規模、大規模に分類し、複合形式をエントランス形式により分類し、それらと滞在利用の基本方針、滞在型利用の施設整備状況等を比較検討する。 2)複合図書館の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用等対する空間的特性による影響の前段として、1)で類型化した施設から分析対象を抽出し、図面、文献、雑誌等を入手し、それらをもとに平面構成や空間的特性を分析する。次に空間的及び平面的特性と1)の分析で得られた滞在型利用、複合利用、座りスペース利用等との関係について比較分析を行い、これらの利用特性に関わる空間的条件を見出す。 3)また、今年度実施できなかった「複合図書館と単独図書館の座りスペース利用を含めた利用特性比較分析」を次年度の後半に実施する計画である。計画の内容は、今年度の分析結果をもとに、広島県、岡山県の単独図書館と複合図書館の現地調査として、来館者へのアンケート調査、座りスペースの利用調査として定点観測調査を行う。分析においては、複合図書館の来館者に関する既往研究同様に、図書館複合利用者と図書館のみ利用者に分類し、それぞれの利用特性を比較分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、施設へのアンケート調査として全国2500施設を対象とした郵送調査を行ったが、回収率を上げるために、WEBアンケート調査に変更した結果、施設側のWEBによる対応状況が異なることが分かり、そのために回答期限を変更することになった。当初計画の「複合図書館と単独図書館の座りスペース利用を含めた利用特性比較分析」は、郵送調査の分析結果をもとに施設調査対象の選定と施設内の調査内容を設定する予定であったが、WEBアンケート調査の回答期限変更により今年度の調査は時期的に難しいと判断し、次年度の後半において実施する計画とした。 計画の内容は、今年度の分析結果をもとに、広島県、岡山県の公共図書館から単独図書館と複合図書館を4~5施設選定し、単独図書館と複合図書館の現地調査を行う。選定基準として、面積、収容冊数が同程度の規模であり、併設施設とし市民利用施設を含み、空間的な複合形式として平面型、積層型等を考慮して選定する。調査方法は、来館者に対するアンケート調査、座りスペースの利用調査として定点観測調査を行う。分析においては、複合図書館の来館者に関する既往研究同様に、図書館複合利用者と図書館のみ利用者に分類し、それぞれの利用特性を比較分析する。この現地調査のために、国内旅費として790,000円、人件費・謝金及びその他アンケート票の印刷費等150,000円を予定している。
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