研究課題/領域番号 |
19K04801
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
大島 秀明 福山大学, 工学部, 教授 (10412313)
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研究分担者 |
酒井 要 福山大学, 工学部, 助教 (10235103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 複合図書館 / 滞在型利用 / 地域拠点 / 複合施設 / 座りスペース利用 |
研究実績の概要 |
本研究は、複合図書館を都市的空間として捉え、来館者の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用の3つの視点から、複合図書館固有の計画的条件や地域拠点としての可能性を見出すことを目的としている。昨年度までは、全国の公共図書館の設置状況と複合化の実態調査として、約3000施設に対して郵送調査と集計及び分析を行い、さらに、各施設の、開設年、延面積等の建物概要、収容冊数等の施設データ、立地条件の種別等を、出版物等の出版物等データを参照し、複合化の最新の状況を調査し、600以上のサンプル数を得た。しかし、当初予定の複合図書館と単独図書館の座りスペース利用を含めた利用特性比較分析については、コロナ感染拡大のために行えなかった。また、複合図書館の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用等に対する空間的特性による影響については、類型化した施設の中から各類型化毎に3~5施設を選定し、図面を入手して平面構成を分析し、それらの特性を抽出し、空間的平面的特性と滞在型利用、複合利用、座りスペース利用等の利用内容との関係について比較分析を行う予定であった。しかし、コロナの感染拡大により、滞在型利用と複合利用、座りスペース利用等の利用特性との関係については、施設側の閉館や利用制限のため調査ができず、平面構成分析と利用内容分析は連携して分析する必要があるため、再度施設選定から見直しする必要があり、それらの比較分析も行えなかった。しかし、昨年度は、日本図書館協会の「日本の図書館 統計と名簿」を含めたデータをもとに滞在型利用の基本方針の有無と複合化の有無による施設整備等との関係について分析を行い、公共図書館の滞在型利用の基本方針と複合化による施設整備に対する明確な影響を明らかにし、その成果を日本建築学会の大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当研究は、広島県、岡山県の単独図書館と複合図書館を現地調査し、来館者へのアンケート調査、座りスペースの利用定点観測調査を行い、図書館複合利用者と図書館のみ利用者に分類し、夫々の利用特性を比較分析する予定であった。しかし、昨年度、一昨年度におけるコロナ感染拡大により、1昨年は4月~6月の緊急事態宣言時には公共図書館のほとんどが閉館し、その後は多くの図書館が断続的に開館し運営を行うようになったが、図書館利用者においては、他人が触った図書からの感染の可能性、図書館内における対人距離、外出自粛等により、従来と異なる利用者側の行動変容が起こり、さらに、利用においても予約制や、時間制限等、図書館利用に対して大きな影響を与えている。従って、図書館内の利用が制限され、コロナ感染前後で利用者行動が大きく変化し、当初目的の通常時の図書館利用者に対する実態調査ができなくなり、昨年度と同様にその影響がしばらく続く可能性があるため当初の当該年度の研究計画を実施することができなかった。当研究目的である複合図書館の滞在型利用、複合利用、座りスペース利用等に対する空間的特性による影響については、通常の利用状況に戻らなければ当初の研究目的を達成することが難しいと判断している。しかし、現地調査に代わり各施設のホームページからのデータ入手や日本図書館協会の「日本の図書館 統計と名簿」を含めたデータ等を利用して、複合化と滞在型利用の関係、都市的環境との関係等について分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までは、コロナ感染前後で利用者行動が大きく変化し、通常時の図書館利用者調査ができなくなっている。当初予定した調査研究項目では、以下を設定していた。①複合利用者と図書館のみ利用者の利用特性の違いを捉えるために、来館者に対する滞在型利用を中心に比較分析し、単独図書館と異なる複合図書館独自の計画条件を明らかにする、②複合利用者と図書館のみ利用者の利用特性の違いを捉えるために、来館者に対する滞在型利用を中心に比較分析し、単独図書館と異なる複合図書館独自の計画条件を明らかにする、③複合図書館の滞在型利用、複合利用には、ホール接続型、平面型、積層型等の複合形式による違いが考えられ、複合形式の違いによる影響の有無を来館者調査によって解明する。④複合図書館を都市的空間として捉え、地域の拠点施設の可能性を見出すために、来館者調査だけではなく図書館利用登録者の郵送調査による地域における居場所利用分析を行う。しかし、コロナ感染拡大の影響で利用者に対する調査が難しいために、昨年度以降は、利用者調査から施設側調査として日本図書館協会によるデータに変更して④を中心とした以下の調査分析を行っている。今後は、A)明らかにする項目の①と②のうち、図書館の規模や施設内容と施設側調査から捉えた都市的データによる立地環境と施設整備との関係分析、B)利用に関する項目を利用者数と貸出冊数等のデータで置き換え、都市的データとの関係分析を行い、C)A)とB)により。④の地域拠点施設の可能性を見出すための基礎的資料の作成を行う。ただし、9月~11月間に、通常利用に近い利用者調査が可能になれば、D)当初の図書館利用者調査を調査対象施設を限定して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、8.今後の研究の推進方策のなかから、A)図書館の規模や施設内容と施設側調査から捉えた都市的データによる立地環境と施設整備との関係分析、B)利用に関する項目を利用者数と貸出冊数等のデータで置き換え、都市的データとの関係分析、D)当初の図書館利用者調査をおこなうためである。そのために、A)とB)については、施設側に対するアンケート調査としての郵送調査費として、印刷費を含めて120、000円を予定している。さらに、今年度行えなかった調査としてD)については、広島県、岡山県の公共図書館から単独図書館と複合図書館を4~5施設選定し、単独図書館と複合図書館の現地調査を行う。選定基準として、面積、収容冊数が同程度の規模であり、併設施設とし市民利用施設を含み、空間的な複合形式として平面型、積層型等を考慮して選定する。調査方法は、来館者に対するアンケート調査、座りスペースの利用調査として定点観測調査を行う。分析においては、複合図書館の来館者に関する既往研究同様に、図書館複合利用者と図書館のみ利用者に分類し、それぞれの利用特性を比較分析する。この現地調査のために、国内旅費等として550,000円、人件費・謝金及びその他アンケート票及び成果物の印刷費その他備品等280,000円を予定している。
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