本研究は、複合図書館を都市的空間として捉え、滞在型利用、複合利用の視点から複合図書館の計画的条件や地域拠点の可能性を見出すことを目的としている。全国の公共図書館の設置状況と複合化の実態調査として約3000施設に対して郵送調査を行い、出版物等のデータとともに分析し、以下の計画的知見を得た。公共図書館の滞在型利用の基本方針と施設整備の分析では、運営方針として滞在型図書館を採用している図書館の比率が最も高く、施設形態別では、単独図書館より複合図書館の方の比率が高い。滞在型図書館の運営方針の導入時期は、計画段階からが最も多く、滞在型の整備内容は、滞在型図書館とその他には差がみられ、滞在型図書館の比率のほうが高い。図書館との複合型施設における施設連携と効果に関する分析では、複合する施設別にエントランスタイプとの関連性をみると、公民館と生涯学習センターとの関連性があり、商業施設と文化会館・ホールとの関連はあまりない。今年度は、図書館と地域内施設との連携のし易さを施設間距離と都市的条件をもとに把握し、その実態と図書館の地域内拠点の可能性に繋がる条件を分析した。DID 地区内より、DID 地区外に図書館が設置される方が、各公共施設との連携数は多い。施設間40 ㎞以内の距離で連携する施設が多く、40 ㎞以上の距離では、連携する施設が減少し、学校は距離に関係なく連携する。図書館本館と連携する距離は、30 ㎞以内が多く、分館と連携する距離は、20 ㎞以内に収まる傾向がある。DID 地区の内外の比較では、施設との連携が DID 地区内の場合、30 ㎞以内の距離に収まる傾向があり、DID 地区外では、40 ㎞以内の距離に収まる傾向があり、DID 地区外の図書館は、他施設と連携する範囲は広い。以上により、複合型図書館の計画において滞在型利用の運営方針、施設間連携の条件、都市的条件等の重要性を示した。
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