研究課題/領域番号 |
19K04802
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
池添 昌幸 福岡大学, 工学部, 教授 (90304849)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小学校 / 分棟校舎 / 増築校舎 / 教室用途変更 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、福岡都市圏に位置する宗像市と宇美町における7つの別棟増築型小学校を対象として、校舎の整備プロセスを明らかにするとともに、現在までの教室用途の変更の実態を把握し、別棟増築型小学校の段階的校舎整備に伴う利用変更の特徴と今後の校舎更新上の課題を考察した。 まず、分棟拡張型小学校の整備プロセスを分析した結果、初期整備でも工期を分けて段階的に整備されており、1校を除き普通および特別教室と管理諸室の一通りの必要機能が整備されていること、増築校舎は、①分棟型、②延長型、③拡幅型、④特定階型の4つに分類でき、増築タイプによって整備用途に傾向があることを示した。さらに、初期整備において工期の途中で第1期の全体計画を変更し、普通教室の縮小、特別教室の整備取りやめを行っており、その後の普通教室の増築の要因となっていることを明らかにした。 次に、分棟拡張型小学校の校舎整備当初と現在の教室用途を比較した結果、7校平均で32.6%が用途変更されていることが分かった。さらに、別棟拡張型小学校の特徴である分棟型増築は学級教室ではなく、特別教室や不定期利用のためのユーティリティルームとして利用されており、教室の増築が難しい現状で有効に活用されていることを明らかにした。一方、普通教室が配置される本校舎は、特別支援学級や共用教室の必要性が高まっている現状において、機動性の高い移動型の教室配置の方が要求への充足度が大きくなっていること、しかしながら学年ブロックの崩れや学年間の連携不足といった学習上の課題が生じていることを指摘した。最後に、今後の校舎の更新では、学級教室のブロックに転用性の高い複数の共用教室を設置する教室ユニットの配置モデルの提示が必要であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した福岡都市圏の自治体における学校施設のマネジメント方針と小学校の校舎構成の分析によって得られた基礎的データをもとに、今年度は別棟増築型小学校の校舎整備プロセスと教室構成の変化、教室転用による教室利活用の実態、以上の分析を行い、具体的な成果を得ることができた。コロナ禍により現地調査の実施時期の調整が難航したが、結果的に2つの自治体の7つの別棟増築型小学校で、当初計画どおりヒアリング調査と観察記録調査を行った。 一方で、公共施設マネジメントの実践である既存校舎の複合化および減築の先進事例、老朽校舎の更新計画の先行自治体に関する調査は実施できなかったため、これらの先行事例の検証は行えなかった。 以上のように、本研究の知見を深めるための先行事例調査は実施できなかったが、当初計画に対しておおむね順調に進展しており、研究課題の1つである既存校舎の整備および教室転用等の利活用プロセスの解明を実行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、現在の教室利用の特性を分析し施設マネジメントの視点から評価するとともに、これまでの知見をもとに段階的な校舎更新モデルを提示する。これらの分析・考察は今年度の調査データを活用するが、必要に応じて教室利用の観察記録調査を追加で実施する。次年度の調査は限定的であり、コロナ禍による調査の影響は最小限に抑えられると考えている。また、調査データの入力および分析では学生の協力を得るが、大学の次年度の方針では学生の入構を認める予定であり、感染対策を十分に講じることで大きな支障はないと判断している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、今年度に国内の学校施設の複合化および減築の先進事例や学校の更新計画の先行自治体を調査する予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い調査を実施することができなかったためである。また、福岡都市圏の小学校を対象とした現地調査も実施が遅れたため分析データの入力作業の期間が短くなり、現有施設で分析作業を行った。 次年度は、上半期に国内先進事例の調査が行える状況であれば調査を実施する。また、今年度実施した調査分析作業を引き続き短期間で集中的に行うため、ノートパソコンの購入と作業補助のための謝金等に使用する。
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