本年度の研究では、福岡都市圏に位置する3つの自治体における12の別棟増築型小学校を対象に実施した資料収集調査、教室内家具の実測調査、教員へのヒアリング調査をもとに、教室配置の変更プロセスと用途変更教室の利用特性を明らかにした。特に、整備当初の普通教室に注目し、特別支援学級教室もしくは共通学習室に用途変更と利用特性を考察した。 まず、普通教室の用途変更を定量的に分析し、12校平均で33.0%であることを示した。さらに、特別支援学級の教室数の差異によって自治体別の特徴がみられること、共用で学習利用する共通学習室は全て用途変更された教室であることを示し、毎年の余裕教室の状況で共通学習室の教室数が変動していることを明らかにした。 次に、特別支援学級教室の用途変更を分析し、用途変更の条件として、①毎年の教室配置変更の有無、②学級教室の配置関係の2つの配置類型があることを示した。さらに規模特性として、大半の教室が学級教室の規模のまま利用されているのに対し、児童数は9人前後であり、規模と利用人数が整合していないことを指摘した。また、利用面では一定の傾向がみられ教室前方が児童机の配置、後方が様々な家具・物品が配置されていることを示し、転用教室では専門的な設備が備えられていないが、1つの教室で多様な活動が展開されていることを明らかにした。 さらに、共通学習室の用途変更を分析し、学級教室隣接型が多くその配置は学級教室の経年移動の影響が大きいことを示した。最後に別棟増築校舎を活かした共通学習室の学習外利用が行われていることを確認した。 以上より別棟増築型小学校は、学年ブロックと特別教室が分散配置されるため、それに伴い近年増加している特別支援学級と余裕教室を利用する共通学習室の設置が影響を受け、室数と規模、専用性の面で課題があることを明らかにした。
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