研究課題/領域番号 |
19K04804
|
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
光井 渉 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40291819)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 日本建築史 / 伝統木造 / 架構 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、実在する歴史的建造物を通じて、その架構形式と内部空間のデザインとの相互関係を検証し、加えてその相互関係が変容していく状態を観察することで、日本建築に関する新たな知見を得ようとするものである。 2020年度は、前年度に引き続き、資料収集と実地調査を行う予定とし、奈良~平安時代の仏堂・門に関する実地調査と東海地方の民家に関する実地調査を計画していた。しかし、4月以降の新型コロナウィルスの蔓延により、長距離移動と宿泊を伴う実地調査が不可能な状況が継続し、また調査を予定した寺社などとの協議も困難となり、年明けまで調査の実施を検討したが、最終的に2020年度における実地調査を断念した。 このように2020年度には実地調査は実行できなかったが、2019年度までに実施した調査研究(東大寺法華堂・當麻寺曼荼羅堂・道成寺本堂など)を基本として、その成果をまとめる機会を得た。そして、その一部を、公益社団法人日本建築士会連合会の会誌『建築士』に「日本の木造軸組架構を考える」と題した6回の連載記事として発表した(光井渉と山本瑠似の連名、各回の内容は、「架構の原型」809号・「架構の補強」810号・「軸組と小屋組」811号・「貫の役割と軸部の組上」812号・「和小屋の構造」813号・「門の架構」814号)なお、同誌は学術誌ではないが、建築の設計施工の専門家が閲覧するものであり、本研究の成果を広く周知する上で大きな意味を持つものといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、歴史的な木造建築の実地調査に基づいて、その架構形式の詳細と改造の過程を内部空間の性格とともに確認することを研究の基本としている。しかしながら、2020年度はコロナウィルスの蔓延によって、遠隔地での宿泊を伴う実地調査を行う環境が整わず、実地調査を全く実施できず、資料調査にも大きな支障があった。そのため、本研究課題の責任者が在籍する東京藝術大学が所蔵する修理工事報告書などに基づいた研究のみにとどまり、当初予定よりも「やや遅れている」状況にとどまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度に開始した本研究課題は、初年度に順調な成果を得たが、コロナウィルス蔓延により2020年度の研究計画には遅れが生じた。2021年度には、その遅れを取り戻すべく、実地調査を効果的に行う予定である。ただし、本研究課題では、長距離移動と宿泊を伴う数人単位の調査チームの編成が必須であり、また調査対象の協力も必要であつ。そのため。実地調査の実行が可能となる状況を、慎重に見極める必要があることに留意しておきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、日本各地の歴史的建造物の実地調査を通じて得られるデータに多くを依存している。この実地調査は、数人のチーム編成の下、宿泊と長距離移動を伴うものであり、また調査対象である寺社や民家所有者との入念な協議が必須となる。しかしながら、2020 年度はコロナウィルスの蔓延によって、こうした必須事項を達成する環境になく、一切の実地調査(及び遠隔地の資料調査)を実施できなかった。そのために2020年度においては直接経費を支出することなく、次年度使用額が発生した。なお、直接経費を使用した実地調査は実施しなかったが、研究自体は実行しており、その成果の一部は発表している。 使用計画については、昨年に調査を予定していた山陽・瀬戸内地域の中世寺院本堂(鶴林寺本堂・浄土寺本堂など)の実地調査の他に、能登半島の民家建築(黒丸家・時国家など)の実地調査を想定している。ただし、コロナ終息とその時期が問題であり、再び計画の大幅な見直しが必要となる可能性が高い。
|