研究課題/領域番号 |
19K04812
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
栢木 まどか 東京理科大学, 工学部建築学科, 准教授 (10453820)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート造 / 寺院建築 / 不燃化 / 長源寺 / 山形市 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とするのは、木造の社寺建築の様式をそのまま模して鉄筋コンクリート造で建設された社寺建築である。本来木造での合理性をもって木割が定められていた伝統的な様式を、鉄筋コンクリート造で踏襲するという事例について、リストアップを進め、その初期の状況を調査することで、鉄筋コンクリート造の黎明期における我が国の建築家及び施工者の工夫や解釈を明らかにしたいと考える。 本年は、戦前期における鉄筋コンクリート造寺院建築の実例として、山形県山形市に現存する長源寺本堂の調査を行った。長源寺本堂は明治44(1911)年の山形市北部大火の後の大正13(1924)年に檀家による無尽講で資金を調達し建立されたものであり、本堂は伝統的な木造の寺院本堂の様式を、鉄筋コンクリート造(以下RC造)で再現したとされる。現地調査の結果、平面計画はメートル法で柱間間隔を決定し、垂木を割り付けている。これにより、一枝寸法のばらつきや、六枝掛けとならない組物など、木割法から逸脱する結果となった。また壁厚と仕上げ塗厚から考察すると、壁内部はRC 造ではなく、柱のみがRC 造の可能性があることがわかった。内装各部は木造だが、組物と躯体の取り合いに隙間や欠けがみられ、施工上の困難があったことが考えられる。いずれも、前例のない状況でのRC造本堂の建設にあたっての試行錯誤があったことが窺える。本調査結果については、日本建築学会東北支部にて報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
RC造寺院建築の最初期事例とされる函館東本願寺では、鉄骨小屋組で本堂の屋根を支えていたが、今回調査した山形市長源寺本堂においては小屋裏を確認することが出来なかったため、引き続き、同じ敷地内の観音堂(昭和7年竣工のRC造)もあわせ、調査を続行したいと考えている。また、設計、施工者に関する情報収集についても今後の課題としたい。 一方で、今般のCOVID-19に関わる状況により、東京から地方都市へ赴いての現地調査が困難となる場合に備え、調査対象事例の見直しを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進展しているが、主に旅費および謝金を予定通り支出できなかった。理由として、追加調査の予定を体調不良で延期したこと、また、一度実施した山形県における現地調査では、現地学生の協力により調査研究をすすめることが出来たためである。次年度において、地方都市における現地調査を引き続き計画しているが、今般の状況にあわせ検討したい。
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