研究課題/領域番号 |
19K04813
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
水野 僚子 日本大学, 生産工学部, 助教 (80736744)
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研究分担者 |
藤本 利昭 日本大学, 生産工学部, 教授 (30612080)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 技術史 / 鋼材 / 近代建築 / 八幡製鐵所 |
研究実績の概要 |
初年次は2018年度の解体時に収集した旧海軍横須賀鎮守府倉庫の鋼材について分析を行った。この建物は昭和10年竣工と言われており、ロールマークなど生産場所を特定できるような情報はなかったが、収集した鋼材を用いて引張試験、成分分析、組織観察といった調査を行った。引張試験ではアングル材の強度と伸びに差異が見られたことから、成分分析を行うと、元素の数値に差異が認められたため、同一形状の部材でも構成している鋼材に異なる鋼材が使用されていたと推定された。また、成分分析では窒素量から転炉材か平炉材かを検討することが可能であると考えられた。そして、組織観察をすることで、引張試験と成分分析で得られたデータの補足を行うことができ、一つの情報を得ることができた。 また、昭和5年竣工と考えられる旧海軍技術研究所科学及電気研究場において、解体時調査を行ったところ、一部で八幡製鐵所のロールマークを確認しているおり、このように製造所を確認できている部材を初年度行った分析と比較することで見えてくるものがあると考えている。ただ、解体現場において調査に限度がある中で、使える部材を収集する難しさがある。 また、明治41年竣工の旧横須賀海軍工廠造機部仕上場について、現地調査と防衛研究所戦史研究センター史料室に残る竣工当時の史料をもとに、大規模工場や屋外クレーンでは輸入材の使用が行われていた当時において、それほど規模の大きくない本工場では古材の鋳鉄柱と鍛鉄のトラスを用いて建てられていたことをまとめた。 資料収集では、当初予定していた鉄鋼史関係の図書のほか、国内外の鋼材のカタログを収集した。特に、国外については英国ドーマン・ロング社のものを調査し、国内では八幡製鐵所関係の資料を国会図書館にて収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、資料収集では、当初予定していた鉄鋼史関係の古書のほか、国内外の鉄鋼メーカーについて調査し、カタログ等を収集した。ただし、見つけられたのはまだほんの一部であるため、他メーカーを含め今後も調査をしていく。 また、国内調査では当初、八幡での調査を予定していたが、次年度の部材分析にかかる予算と現在の社会情勢を考え、2年次以降に行うこととした。 そして、部材調査については、2018年度の解体時に収集することができた旧海軍横須賀鎮守府倉庫の鋼材について分析を行った。この分析では引張試験、成分分析、組織観察の調査を行い、まだ手探りの部分はあるが、これらの情報は他のデータとの比較によってさらに活かされていくものと考えており、今後の分析の手がかりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは2019年度に収集した旧海軍技術研究所科学及電気研究場の部材について、分析を検討している。この建物は昭和5年竣工と考えられ、ロールマークはほとんど入っていない鋼材を使用していたが、一部で八幡製鐵所のロールマークを確認している。このように製造所を確認できている部材を初年度行った分析と比較することで見えてくるものがあると考えている。 また、初年度に引き続き資料調査を進め、部材生産の背景を探るとともに、近代建築の部材について報告されたものの収集を行う。そして、初年度に行えなかった現地調査については、現在の世界状況の様子を見ながら、国内もしくは海外での調査を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年次は、解体によって得られた部材の分析に多くとられ、資料収集等はおさえた形となった。また、次年度も違う建物の部材分析を行うとなるとそちらの費用もある程度かかると予想される。
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