本研究では中近世の神社を対象として、(1)神社建築を造営した工匠の移動と、(2)神社本殿建築の移動(移築)に着目し、その流通に支えられた神社の再生について建築史学的に解明することを試みた。(1)に関しては、神社本殿の内法長押の正面見廻しや枕捌にみられる技法と意匠の移り変わりと、それらの造営に関与した工匠との関係を見出した。(2)に関しては、春日大社本殿および若宮神社本殿から移築された畿内各地の旧社殿を比較検討し、分布と河川との関係、正面意匠と技法を探った。とくに内法長押と繋虹梁との納まりや細部装飾に着目し、奈良県内の春日造と比較した分類を行い、旧社殿の特質を明らかにした。
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