| 研究課題/領域番号 |
19K04819
|
|---|
| 研究機関 | 福井大学 |
|---|
研究代表者 |
山田 岳晴 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (40419841)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| キーワード | 玉殿 / 神社 / 建築 / 本殿 / 起源 / 発展 / 意匠 / 技法 |
|---|
| 研究実績の概要 |
今年度（第2年度）も継続して、神体を奉安する神社本殿内に安置された小建築である玉殿と、平面構成や形式を持つ祭祀を行う場である神社本殿とを併せて調査分析するという視点に立って作業を進めた。調査を中心に、玉殿の広島県での様相を踏まえ、神社建築の実測、建築的特徴の把握、資料の収集と一部の成果発表を行った。
広島県福山市の中条八幡神社は調査から、これまでの本殿の地域的分析どおり、内々陣を有する備後国の特徴を持った本殿であることが判明した。虹梁の彫刻などから十七世紀後期のものと判断でき、本殿内々陣柱の墨書から元禄十二年(1699)の建築と判明した。広島県東広島市の宮山八幡神社は実地確認を行い、蟇股の意匠や一木造出の技法の使用などから中世玉殿の古いものであることが判明した。
以上、類例調査では、新たな中世玉殿の発見という大きな成果とともに、概要の確認ができた。実地調査を継続して進める予定である。
昨年度実地調査を行った滋賀県東近江市の雨神社本殿については調査結果の分析により、手挟の検討から棟札にある大永三年(1523)の建立と確認できた。滋賀県蒲生郡竜王町の左右神社本殿については分析により、豕扠首と虹梁の意匠、庇組物などの大面取、反り増しの桁や垂木から、十六世紀前期から中期のものと判断できた。また、身舎後方の舟肘木が桁・面戸板と一木造出であり、玉殿に多用される中世に特徴的な意匠を用いた本殿であることが判明した。小規模一間社の雨神社本殿を含めて、身舎を内陣と外陣に分割する平面としており、この地域の神社本殿の一般的な形式であることが確認できた。
以上のように、玉殿を有する神社本殿が多い滋賀県域において、中世においては、一間社の小規模本殿も広く存在しており、小規模本殿と玉殿の関係性にも注目して調査を進めることができた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
神社玉殿と本殿との関係性について、玉殿を有する神社本殿が多い滋賀県域において、中世の一間社の小規模本殿の事例を初年度に調査し、それら個々の事例の分析は進んでいる。それら以外にも中世の事例が複数確認でき、研究期間中に必要な調査の方向性が明確になっている。また、研究の過程で、現存する玉殿の新たな事例があるとの情報も得ており、分析に向けての資料が整いつつある。一方で、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言等が断続的に発出され、令和元年度末以降、実測調査の延期と再調整の繰り返しを余儀なくされており、予定している実測調査は一部しか実施できていない。また、資料整理の人員の確保も困難な状況が続いており、当初の計画からは、遅れている状況と判断した。
|
| 今後の研究の推進方策 |
今後も神社本殿内の小建築である玉殿と、神社本殿の平面構成や形式との関係を具体的に把握するための調査を継続する。令和元年度末から新型コロナウイルスの影響で、計画していた実測調査や研究補助員の確保が困難となっているが、今後も国・県・大学等の新型コロナウイルスの情報に留意し、徹底した感染予防対策をとりながら調査を再開し、順次、関係者の協力を得て、研究を進めていく。
これまでの調査から、滋賀県域において、中世の一間社の小規模本殿の事例が複数注目されてきているが、そうした小規模本殿の事例について、さらに調査を行い、玉殿との関係性を中心に分析を進める。一方、神社本殿内の小建築である玉殿については、現存の情報に基づく和歌山圏や山陽道地域の事例の実測調査、そのほかの現存する玉殿の情報収集も行う。
次年度は、当初の計画では最終年度（第3年度）であるが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科学研究費助成事業の補助事業期間の延長を視野に、第2年度に実施できなかった、個別事例の調査と資料整理及び、各玉殿の建築的特徴の分析が課題であると考えている。また調査・研究を継続するとともに、これまでの作業をまとめて論文の執筆を進める。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、令和元年度末及び令和2年度に予定していた実測調査及び資料整理が一部しか実施できておらず、それに関わる旅費・物品費・人件費の支出が次年度に持ち越された状況になっている。
次年度においては、新型コロナウイルスの収束等で実測調査が可能となった場合、関係者の協力を得て、越年度分を含め、実測調査及び資料整理を進め、期間延長を含めて最終年度までに当初の計画の水準を回復する。
|
