研究課題
基盤研究(C)
本研究では,近代建築草創期に展開された英国のアーツ・アンド・クラフツ運動と日本の分離派建築会の活動に関与した建築家やデザイナーの思想の揺らぎを「惑い」として捉え,自然/歴史,都市/田園,装飾/空間,原始性/近代性,植物/動物等の対概念を析出し,その広がりと意味を明らかにした。具体的にはW.モリス,W.クレイン,L.F.デイ,C.R.アシュビー,M.H.ベイリー・スコット,W.R.レサビー,C.F.A.ヴォイジー,堀口捨己,蔵田周忠らの著作を扱った。
建築歴史・意匠
大きく二つの学術的意義があると考える。ひとつは「惑い」や「両義性」という概念を提示したことであり、機能性や合理性等のいわゆる近代的側面からのみ建築や装飾を評価しない方法を示した。もうひとつは近代建築草創期の英国と日本の思想的交流の一端を示したことであり、起源をめぐる問いの構造等を明らかにした。社会的意義として、研究成果の一部を分離派建築会に関する展覧会で発表することができた。