研究課題/領域番号 |
19K04821
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 一貴 神戸大学, 工学研究科, 教室系技術職員 (90533977)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モダニズム / 故郷 / ホーム / ジードルンク / 工業化 / 郷土保護 / 都市化 / 自然 |
研究実績の概要 |
初年度である2019年度は,文献資料の調査に基づく議論の分析,現地調査に基づく建築空間像に着手した。これまでの調査研究を通じて得られた知見を整理するとともに,9月にドイツに渡航し,文献資料の調査・収集および現地踏査を実施した。具体的には,ベルリン国立図書館,ベルリン工科大学図書館などを訪ね,本研究で注目する雑誌資料のうち,ベルリンの出版社が発行していた雑誌である『Die Bauwelt』(1910年創刊)と『Der Staedtebau』(1904年創刊)を通覧し,近代化に伴う住まいや郷土に関する議論の推移について調査するとともに,関連資料の収集をおこなった。また,フランクフルト・アム・マインの出版社が発行していた雑誌である『Stein, Holz, Eisen』(1926年創刊)について,ドイツ国立図書館ライプツィヒ館にて創刊号を閲覧し,雑誌編集の出発点や方向性に関する情報を収集した。 また,20世紀前半の建築思潮を対象とする上で重要であるバウハウスについて,設立100周年を記念した展覧会の開催や建築物の公開がドイツ各地で行われており,ベルリンやライプツィヒのほか,ヴァイマールを訪ね,当時の実験的住宅であるハウス・アム・ホルンをはじめ,20世紀前半の住宅や建築の事例について現地踏査を行うとともに,バウハウス博物館等の資料館にて情報収集も成し得た。 これらの調査を基に,郷土に関する雑誌上の議論の経過と傾向の析出,具体的な建築空間像の分析を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2019年度は,研究実施計画の通りドイツに渡航し,文献資料の調査ならびに現地調査を実施した。文献資料について,主たる分析の対象に置く4誌のうち,『Der Staedtebau』と『Stein, Holz, Eisen』は概ねすべて,『Die Bauwelt』は1920年代前半までの概ねを調査・収集できた。調査すべき文献資料が多いが,新たに導入した機材によって効率的に行えている。それぞれの調査に基づく分析も順次進めている。以上から総合的に判断し,「(2)おおむね順調に進んでいる」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,年度内にドイツでの調査を計画しているが,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,所属機関の方針により,研究活動や海外渡航を含む国内外の出張が制限を受け続ける可能性が高い。研究計画の変更を判断する段階にはないが,研究を遂行する上での課題等について,対応を検討する必要がある。 文献資料の調査に基づく議論の分析については,これまでに調査・収集できた文献資料の分析を進めるとともに,現地の所蔵機関への照会等,国内からでも可能な調査を試みる。 現地調査に基づく建築空間像の分析についても,これまでに調査・収集できた文献資料に所載の図面や写真等の図版の情報によって補完するなど,手元にある資料と手段により可能な調査を試みる。 海外渡航が可能となった際に円滑に調査が遂行できるように,状況の変化に応じて可能な調査と分析に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず次年度使用額が生じた理由を述べる。研究代表者がドイツへの渡航を伴う調査に際して,他のプロジェクトと期間を区分して実施し,財源を分けて執行したため,外国旅費を当初の見込みよりも低く抑えることができた。このことから次年度使用額が生じた。 次に使用計画を述べる。2020年度は,ドイツへの海外渡航を伴う文献資料の調査および現地調査にかかる旅費への使用を計画している。しかし,新型コロナウイルスの感染拡大防止のために延期または中止を余儀なくされることが想定される。このことに対応して,国内外の機関の協力を得て,国内からでも賃借・複写等により文献資料の調査収集を進める方針である。そのための現物貸借費や複写費,送料に使用することを計画している。また,いっそう円滑に,効率的そして生産的に調査分析を進めるために,資料整理補助への人件費,パソコンの更新や周辺設備機器の充実に使用することなども計画している。
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