研究課題/領域番号 |
19K04822
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
千代 章一郎 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (30303853)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ル・コルビュジエ / 装飾芸術 / 芸術 / 工業 / 手工業 |
研究実績の概要 |
1-1 19世紀後半装飾芸術運動のル・コルビュジエによる解釈:ル・コルビュジエが1910年にウィーンやドイツ各地の装飾芸術運動を視察した手帖やそれに基づく論文について網羅的に分析し、ドイツ近代建築研究者、田所辰之助氏の助言を得ながら、ル・コルビュジエが主題としていたものを時間軸に沿って整理し、手仕事・機械、芸術・工芸、芸術作品・量産品という対立項を横断するル・コルビュジエの思想形成を明らかにした。これは、手工業から工業化と発展的に進むことを前提とする建築史・デザイン史の通説とは異なる結果であり、20世紀初頭のドイツ装飾芸術運動とフランス装飾芸術運動の複雑な関係は、その後の近代建築史の展開の展開にとっても重要な意味を持つものと思われる。 一方、ドイツ装飾芸術運動の研究と同時期にル・コルビュジエが故郷のラ・ショー=ド=フォンにおいて設計した住宅については、既往研究や参考文献の整理と同時にラ・ショー=ド=フォンにおいて未公開資料を収集して、設計概要を把握した。 次年度においては、これらの住宅制作におけるドイツ装飾芸術運動の影響の分析を継続して進める。 1-2 オーギュスト・ペレのル・コルビュジエの住宅への影響:ドイツ装飾芸術運動と同時に、同時期ル・コルビュジエはオーギュスト・ペレの作品・理論から影響を受けていることから、ル・コルビュジエ財団に保管されている資料を精査し、ペレとの書簡、ペレの事務所でのル・コルビュジエの図面、ペレの建築作品についてのル・コルビュジエの言説を整理した。その結果、家具と建築を空間として一体的に捉える「瓶」の発想が、ペレの理論から得られたものである、という仮説を得た。 次年度においては、芸術作品・家具・建具・壁の関係性に着目し、ル・コルビュジエの初期住宅(4作品)、ペレの住宅作品(主に13作品)それぞれについて進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランス、パリでの資料収集、スイス・ラ・ショー=ド=フォンでの資料収集及び現地調査を実施した。年度末の調査であったことと、予想を超える資料が収集できたことにより、やや当初計画より遅れているところもあるが、研究協力者との綿密な議論により、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2-0 昨年度からの継続研究課題:次年度においては、まず、19世紀から20世紀にかけてのフランス装飾芸術の再解釈について、建築史的な意義をフランス・ドイツ・イギリスを含めたヨーロッパ建築思想史の中に位置付ける。また、ル・コルビュジエの初期住宅作品(4作品)とペレの住宅作品(13作品)を中心とした、「デコール」要素の分析を行う。 2-1 ル・コルビュジエとペリアンの協働:アトリエ・ル・コルビュジエに在籍した建築家のなかでも、シャルロット・ペリアンは数多くの内装や設備の設計を任されている。ペリアンについては、研究の準備段階において、すでにル・コルビュジエとの協働建築作品の予備的考察を始めているが、さらに、それらの作品について、シャルロット・ペリアン財団における資料の精査によって、両者の協働形態及びペリアン独自の「デコール」の展開を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地資料収集・調査にかかる作業に占めるエフォートが多く、物品の購入について十分に行えなかった部分がある。 次年度は必要機材、図書資料収集をはじめ、より効果的な研究遂行に必要な物品購入を行う予定である。
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