研究課題/領域番号 |
19K04823
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊東 龍一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80193530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 彫刻装飾 / 彫物 / 彫物師 / 彫物大工 / 仏師 / 荘厳 / 寺社 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、熊本県の彫物および大工・仏師等に関する文献・現地調査等をおこなった。文献等においては、彫物に関わる職人名として、彫物師・彫物大工等が記されることが少なく、実際の彫物の裏等の墨書においても大工名が記されることから、大工が彫物に関与する例がほとんどとみられる。したがって、作品と大工名を丹念に整理することから彫物に関わった職人を特定し、その動向を明らかにしてゆくことが重要であると考えた。 研究計画においては、鹿児島県の龍柱に関わった職人等についても文献調査等を進めることとしていたが、これについては新型コロナの影響もあって調査が不十分である。 一方、熊本県湯前町の大師堂須弥壇に関与した常州の賀吽の手がけた彫物を熊本県南部の作品を中心に整理を行った。また、賀吽の出身とされる常州の調査の端緒として、近世における関東の彫物大工の祖ともいわれる島村氏の出た楽法寺に手がかりを求め『雨引山の絵画 楽法寺絵画資料調査報告書』(筑波大学日本美術史研究室 平成19年)や後藤道雄『茨城彫刻史研究』(中央公論美術出版 平成8年)等を基に調査したところ、今のところ賀吽なる人物は認められていないが、吽賀なる人物が楽法寺に確認された。今後その詳細を明らかにしたい。 一方、大師堂内の弘法大師像の作者として想定される太宰府を中心とする仏師の中世から近世における活動を把握するための資料として『佐賀県社寺調査報告書』(佐賀県立博物館 平成8年)等を閲覧し資料蒐集した。現段階では、直接熊本県の球磨地方に関連する仏師などは確認できていない。 中世の彫物大工・仏師の動向を明らかにする情報はやはり多くはない。近世の状況を押さえる中から、中世につながる情報を見出してゆくことを考えてゆくべきであると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必ずしも大きな成果を得ることが出来たとは言えないであろう。その理由に新型コロナの影響があり年明け以降の調査は不可能となったことは確かであるが、主要な要因は、現段階が基礎史料の蒐集の段階ににあることによると考えている。一定の史料の集積がなくては展望は開けない。着実な調査を積み重ねたい。
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今後の研究の推進方策 |
中世の史料がそれほど多く存在しないので、直ちに成果は出ることは当初から難しいと考えていたが、概要にも記したように、さらなる史料の蒐集や、近世から中世へと遡ることによる考察や、太宰府や常州の調査に本格的に取り組むことで新たな情報を得ることができ、より充実した検討ができるると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の追い込みの時期に長距離の出張による調査ができなくなったことが原因である。本来の次年度の調査・研究に加え本来行うべき調査を合せて実施する計画である。
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