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2021 年度 実施状況報告書

近世九州における彫物の独自性に関する研究-伝播経路による検討ー

研究課題

研究課題/領域番号 19K04823
研究機関熊本大学

研究代表者

伊東 龍一  熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80193530)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード彫物 / 彫物師 / 大工 / 仏師 / 伝搬
研究実績の概要

九州における彫物の想定される伝播経路のうち、①関東から九州へという経路、②大宰府から九州各地へという経路、あるいは①や②から派生する二次的なものであるかもしれないが③現在の熊本県植木町付近から周辺へ広がってゆく経路、の3つについて調査を実施した。①については、熊本県湯前町・大師堂の、賀吽が関与した須弥壇の解体修理が実施されたため、これを調査した。内部から、失われたとされていた格狭間の彫物1枚が発見された。「龍」の薄肉彫で、裏面に他の格狭間と同じ天正9年(1581)に賀吽の作であることを記す墨書が見出された。龍頭部はほぼ正面を睨み、手前に伸ばして宝珠を掴む左腕を大きくデフォルメした表現は類例をみない。賀吽の居住地とされる関東常州の調査については、コロナ禍の影響で県外への現地調査を実施し難い状況であったため、『茨城県史料』・『大和村誌』をはじめとする文献史料を中心に中世後期の寺院関係文書を調査した。現在までに賀吽につながる彫物大工、僧侶を見出すことはできていないが調査を継続したい。
②の経路については、文禄2年(1593)頃の造営とみられる太宰府天満宮本殿の彫物の調査を実施した。本殿の金柱上の蟇股は内部に梅紋等が施されるが、いずれも近代の作で、本来別の場所にあった壁付の蟇股であった可能性があると推定した。今後、本殿正面を飾る唐破風内を含む軒下の彫物の調査を実施し、かつ大宰府天満宮本殿造営関係史料から伝播に関わる情報を見出したい。
③については、玉名市の伊倉南八幡宮本殿妻蟇股内、伊倉北八幡宮楼門、繁根木八幡宮本殿妻には力士(あるいは鬼)の大彫物があり、力士の彫物の写実性の高さからみても、彫物も18世紀中期以降の作と判断した。すなわち、大彫物の源流を辿ることはできていないが、大彫物で飾ることの18世紀以降の展開を跡づけることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年から続くコロナ禍の影響で県内外の現地調査を実施し難い状況であったこともあり、とくに関東方面の現地調査ができなかったことが大きな理由である。しかしながら、『茨城県史料』や『大和村誌』等の文献的史料の調査を進めることができた。この調査による成果は今後の現地調査においても大いに役立つものとみられる。

今後の研究の推進方策

コロナ蔓延の状況もやや好転していることから、今年度の関東地方の現地調査を実施することは十分可能で、早い時期にこれを実施することで大きな研究の進展が期待できる。
また、熊本・九州の工匠や彫物の状況について、今年度九州北部の調査を実施予定である。研究期間延長によって確実に以上を実施し、取りまとめ、本研究の成果としたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナの影響が大きく、関東とくに茨城県の現地調査ができず、九州内の現地調査も十分にできなかったためである。今年度は、コロナの状況が確実に好転している。早い時期に、しかし十分な調査を実施する計画である。

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公開日: 2022-12-28  

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